ソフトバンクが劣後特約付社債(劣後債)を発行します。正式名称は「ソフトバンク株式会社第2回無担保社債(劣後特約付)」です。昨年12月の第1回無担保社債(劣後特約付)から2ヶ月ぶりの発行です。
期間は約7年(2022/2/9償還)であり、仮条件は2.20%~2.80%(中央値2.50%)です。利率は中央値の2.50%となりました。募集期間は2015年1月27日(火)~2月6日(金)です。
劣後特約付社債(劣後債)とは、普通社債などの一般債権よりも元利金の返済順位が低い社債です。破産、会社更生、民事再生等の「劣後事由」が発生した場合には、劣後債の元利金は、一般債権者に元利金全額が支払われた後の弁済となります。一言で言うと、デフォルトした場合は高い確率で紙くずになる債券です。
※最新のソフトバンクの個人向け社債については以下で解説しています。
目次
ソフトバンクとは
言わずと知れたソフトバンクは、パソコン用パッケージソフトの流通業から事業を開始し、2001年9月よりブロードバンド総合サービス「Yahoo!BB」を開始しました。2004年7月に固定通信事業会社の日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)、06年4月に移動通信事業会社のボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)を買収しました。
グループ全体の経営戦略としてネット関連事業を軸に、多様な収益基盤を確立しています。2013年7月には米国の大手移動通信会社のスプリント、翌14年1月には米国の携帯端末卸売会社のブライトスターを買収しました。
また、移動通信会社のイー・アクセス、同じくウィルコム、そしてオンラインゲームを手掛けるガンホー(3765)も連結子会社化し、投資先のアリババがNYに上場しました。
事業別売上構成比(2014年3月期)は、移動通信事業47%、固定通信事業7%、インターネット事業6%、その他(プロ野球球団経営他)事業1%、スプリント事業が39%です。
ソフトバンク劣後特約付第2回無担保社債(劣後債)の分析
高金利定期預金との比較
現在の7年もの高金利定期預金は、大阪市近辺に在住または勤務している方ですと、大阪協栄信用組合で1000万円以上預け入れると年0.75%です。
全国的な銀行等では、7年ものの定期預金はほとんどありません。5年ものですとSBJ銀行が年0.55%です。現在の日本国債5年と7年の利回り差は、日本相互証券のデータで0.08%です。7年もの定期預金の理論値としては、0.63%を想定できます。
今回のソフトバンクの個人向け社債の利率は、ノーリスクの定期預金を1.57%~2.17%上回っています。定期預金との利回り格差を見て、デフォルトリスクを考慮すると利率は妥当かという観点で検討することになりますす。
過去のデフォルトの確率
債券格付はBBB+(JCR)です。2014年5月16日時点では、JCRのソフトバンクの長期発行体格付はA-(見通しは安定的)でした。ちなみにJCRはR&Iよりもワン・ノッチ格付けが高い傾向にあります。
あの東京電力にもA格を長らく付与しています。この格付にはA格未満の社債は持てないという機関投資家が社債を投げ売りする事態になるのを避ける意図があるのは明白です。
わが国の様々な方面への配慮に満ちた「大人の事情」が芳醇に香っています。例えるならば、ロブションの焼き立てパンないしブルガリ・プールオム・エクストリーム・オーデトワレです。
参考JCRとR&Iの格付格差(レートスプレッド)は、社債購入前に要チェック!
JCRの格付けはR&Iよりワンノッチ(1つ)高いという企業は結構あります。ソフトバンクがR&IではなくJCRから格付けを取得予定というのは、ソフトバンク側に立つと意図はよくわかります。
JCRは昨年12月4日時点では、ソフトバンク社債について以下の通りに評価し、長期発行体格付はA-としており、格付けの見通しは「安定的」としています。
国内移動通信を中心に好業績を維持しており、15/3 期の営業利益は 9,000 億円(一時益を含まず)が見込まれている。移動通信事業では累計契約数の増加が続いており、競争力は維持されている。また、固定通信事業やインターネット事業も順調に推移している。
スプリント事業では、15/3 期第 2 四半期のセグメント利益が 150 億円に止まっている。今後、新経営体制のもと営業攻勢を強めるととも
に追加の人員削減などコスト削減も進める方針である。競争力・収益力の強化に向けた取り組みについて捗状況を見守りたい。
スプリント事業の取得によって悪化した財務内容は、国内事業の安定したキャッシュフローにより徐々に改善が進むであろう。ただし、新たな買収などによって財務内容が悪化するようであれば、状況に応じて格付への反映が必要になる。
なお、今回の社債発行による調達資金は 15 年 5 月に子会社が発行している優先出資証券の償還資金(2,000 億円)と今後の戦略的な投融資(具体的な内容は未定)に充当する予定であり、直ちに財務内容に影響が生じるものではない。
JCRのBBB格社債(7年)の平均累積デフォルト率(2000~2013年)は5年3.33%でした。7年のデータは公表されていません。
同じ格付の社債、店頭売買参考利回りとの比較
日本証券業協会のデータでは、JCRのBBB格社債(7年)の複利利回り平均値は0.833%です。
ソフトバンクの劣後債の店頭売買参考統計値利回り平均(複利)は、残存期間約5年11ヶ月もの(2021/12/17償還)が2.484%でした。
ソフトバンクの財務状況
財務指標
自己資本比率は11.8%、有利子負債は7兆9910億円、現金等は1兆9634億円、営業キャッシュ・フローは8602億円です。
純有利子負債/EBITDA 倍率3.6倍、インタレスト・カバレッジ・レシオ 6.6倍です。
非常に高いレバレッジをかけており、低金利の波に乗ってM&Aによる成長を加速しています。レバレッジ経営の申し子であり、投資対象としては、社債よりは株式向きの企業であることは確かです。
社債及び借入金の内訳
2014年3月末のソフトバンクの短期借入金の平均利率は1.25%、1年内返済予定の長期借入金は0.95%です。
長期借入金の平均利率は1.34%で、返済期限は2015年4月~2020年です。社債のの平均利率は5.96%で、返済期限は2015年4月~2040年12月です。
ソフトバンクの有利子負債には財務制限条項が付されており、主な内容は次の通りです。
- 事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額が、前事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額の75%を下回らないこと。
- 連結会計年度末におけるソフトバンク㈱の連結財政状態計算書およびBBモバイルの連結貸借対照表、ならびにソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム各社の事業年度末における貸借対照表において債務超過とならないこと。
- ソフトバンクの連結損益計算書において営業損益または親会社の所有者に帰属する純損益が2期連続損失とならないこと。
- 借入契約で定める調整後純有利子負債またはレバレッジレシオが、各事業年度末日および第2四半期末日において、それぞれ一定の金額または数値を上回らないこと。
ソフトバンク劣後特約付社債(劣後債)の投資スタンス
ソフトバンク株式会社第2回無担保社債(劣後特約付)については、社債投資まとめさん、すぱいくさん、きびなごさんも記事になさっています。
異次元緩和によって日銀が債券市場におけるイナゴと化しており、それに乗じてマイナス金利(高値)で国債を買い入れて、日銀に更に高く売るというトレーディングも展開されています。
金利は極限まで低下しており、イールドが盛大に潰されて焦土と化しました。当座預金に預けられる銀行はまだましですが、保険会社や年金基金は苦悶しています。現在の日本国債利回りは以下の通りです。
期間(年) | 利回り(%) |
---|---|
1 | -0.018 |
2 | -0.029 |
3 | -0.034 |
4 | -0.028 |
5 | -0.009 |
5年債までマイナス金利になっており、「悪い冗談」です。個人の立場だと株式やREITや外債に損を覚悟でシフトするのもありですが、社においては諸々のリスク管理や規制に鑑みるとなかなか大胆なシフトは難しく、涙目を通り越して意識を喪失して沈み行く情勢です。
ヘッジ外債を増やしたいところですが、外債も金利が低下しており、米国は利上げによるヘッジコストの増加も予測される局面で難しい状況です。
更なる追加緩和があると冗談抜きに10年債あたりまで0%に近づくのではという戦慄的恐怖が漂っています。このような情勢では高金利のイールドには希少価値があります。また、日本では信用スプレッドが乗った社債があまりなく、今回のソフトバンク社債は貴重な高金利社債です。
もちろん高金利は高リスクの裏返しです。約7年という長めの年限であり、金融緩和期はレバレッジをかければかける程に得をする側面がありますが、財務状態がよくない企業は金融危機的な状況になると脆弱です。
申し込みは100万円以上100万円単位です。デフォルトの可能性を考慮して、あくまで資産の一部を投資するのが無難です。丸々返ってこなくても問題ない範囲で購入しましょう。資産の一部であれば、検討に値する社債だと考えます。
ソフトバンク株式会社第2回無担保社債(劣後特約付)は、みずほ証券(配分57.6%)、大和証券(21.5%)、三菱UFJモルスタ証券(10.0%)、SMBC日興証券(10.0%)、SBI証券(0.63%)、岩井コスモ証券(0.13%)、岡三証券(0.13%)、東海東京証券(0.01%)で購入できます。利払日は年2回(毎年2/9、8/9)です。
配分は前回のものです。今回も同じような配分と思われます。狙い目は配分が多いみずほ証券、大和証券、三菱UFJモルスタ証券、SMBC日興証券です。これらの証券はIPOの取り扱いも多いので、一定の残高を入金して適宜お付き合いしてIPOの獲得も狙いたいところです。
ネットで気軽に申し込めて利便性が高いのはSBI証券です。
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