ソフトバンクが劣後特約付社債(劣後債)発行!(2014年12月)

更新日:   個人向け社債

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ソフトバンクが劣後特約付社債(劣後債)を発行します。正式名称は「ソフトバンク株式会社第1回無担保社債(劣後特約付)」です。

期間は約7年(2021/12/17償還)であり、仮条件は2.30%~2.80%(中央値2.55%)です。利率は2.50%となりました。募集期間は2014年12月4日(木)~12月18日(木)です。

劣後特約付社債(劣後債)とは、普通社債などの一般債権よりも元利金の返済順位が低い社債です。破産、会社更生、民事再生等の「劣後事由」が発生した場合には、劣後債の元利金は、一般債権者に元利金全額が支払われた後の弁済となります。一言で言うと、デフォルトした場合は高い確率で紙くずになる債券です。

最新のソフトバンクの個人向け社債については以下で解説しています。

ソフトバンクとは

言わずと知れたソフトバンクは、パソコン用パッケージソフトの流通業から事業を開始し、2001年9月よりブロードバンド総合サービス「Yahoo!BB」を開始しました。2004年7月に固定通信事業会社の日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)、06年4月に移動通信事業会社のボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)を買収しました。

グループ全体の経営戦略としてネット関連事業を軸に、多様な収益基盤を確立しています。2013年7月には米国の大手移動通信会社のスプリント、翌14年1月には米国の携帯端末卸売会社のブライトスターを買収しました。

また、移動通信会社のイー・アクセス、同じくウィルコム、そしてオンラインゲームを手掛けるガンホー(3765)も連結子会社化し、投資先のアリババがNYに上場しました。

事業別売上構成比(2014年3月期)は、移動通信事業47%、固定通信事業7%、インターネット事業6%、その他(プロ野球球団経営他)事業1%、スプリント事業が39%です。

ソフトバンク劣後特約付第1回無担保社債(劣後債)の分析

高金利定期預金との比較

現在の7年もの高金利定期預金は、大阪市近辺に在住または勤務している方ですと、大阪協栄信用組合で1000万円以上預け入れると年0.75%です。

全国的な銀行等では、7年ものの定期預金はほとんどありません。5年ものですとSBJ銀行が年0.55%です。現在の日本国債5年と7年の利回り差は、日本相互証券のデータで0.136%です。7年もの定期預金の理論値としては、0.686%を想定できます。

今回のソフトバンクの個人向け社債の利率は、ノーリスクの定期預金を1.55%~2.114%上回っています。定期預金との利回り格差を見て、デフォルトリスクを考慮すると利率は妥当かという観点で検討することになりますす。

過去のデフォルトの確率

債券格付はBBB+(JCRより取得予定)です。2014年5月16日時点では、JCRのソフトバンクの長期発行体格付はA-(見通しは安定的)でした。ちなみにJCRはR&Iよりもワン・ノッチ格付けが高い傾向にあります。

あの東京電力にもA格社債を長らく付与しています。この格付にはA格未満の社債は持てないという機関投資家に対する配慮に満ちた「大人の事情」が濃厚に充満しています。

参考JCRとR&Iの格付格差(レートスプレッド)は、社債購入前に要チェック!

JCRの格付けはR&Iよりワンノッチ(1つ)高いという企業は結構あります。ソフトバンクがR&IではなくJCRから格付けを取得予定というのは、ソフトバンク側に立つと意図はよくわかります。

JCRは5月16日時点では、ソフトバンク社債について以下の通りに評価しています。

ソフトバンクは移動通信事業では 4 年連続で純増数トップを記録するなど競争力を維持している。また、固定通信事業やインターネット事業も順調に推移している。スプリント事業は 14/3 期第 4 四半期に 569 億円のセグメント利益を確保した。今後、他のセグメントとのシナジー効果を具体化するなどさらなる競争力・収益力の強化が必要であり、その進捗を見守りたい。

スプリント事業の取得によって悪化した財務内容は、国内事業の安定したキャッシュフローにより徐々に改善が進むであろう。ただし、新たな買収などによって財務内容が悪化するようであれば、状況に応じて格付への反映が必要になるだろう。

JCRのBBB格社債(7年)の平均累積デフォルト率(2000~2013年)は5年3.33%でした。7年のデータは公表されていません。

同じ格付の社債、店頭売買参考利回りとの比較

日本証券業協会のデータでは、JCRのBBB格社債(3年)の複利利回り平均値は0.915%です。

ソフトバンクの社債の店頭売買参考統計値利回り平均(複利)は、残存期間約5年もの(2020/11/27償還)が1.338%でした。これは劣後特約が付いていない社債の利回りです。

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ソフトバンクの財務状況

財務指標

自己資本比率は11.8%、有利子負債は7兆9910億円、現金等は1兆9634億円、営業キャッシュ・フローは8602億円です。

純有利子負債/EBITDA 倍率3.6倍、インタレスト・カバレッジ・レシオ 6.6倍です。

非常に高いレバレッジをかけており、低金利の波に乗ってM&Aによる成長を加速しています。レバレッジ経営の申し子であり、投資対象としては、社債よりは株式向きの企業であることは確かです。

社債及び借入金の内訳

2014年3月末のソフトバンクの短期借入金の平均利率は1.25%、1年内返済予定の長期借入金は0.95%です。

長期借入金の平均利率は1.34%で、返済期限は2015年4月~2020年です。社債のの平均利率は5.96%で、返済期限は2015年4月~2040年12月です。

ソフトバンクの有利子負債には財務制限条項が付されており、主な内容は次の通りです。

  • 事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額が、前事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額の75%を下回らないこと。
  • 連結会計年度末におけるソフトバンク㈱の連結財政状態計算書およびBBモバイルの連結貸借対照表、ならびにソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム各社の事業年度末における貸借対照表において債務超過とならないこと。
  • ソフトバンクの連結損益計算書において営業損益または親会社の所有者に帰属する純損益が2期連続損失とならないこと。
  • 借入契約で定める調整後純有利子負債またはレバレッジレシオが、各事業年度末日および第2四半期末日において、それぞれ一定の金額または数値を上回らないこと。

ソフトバンク劣後特約付社債(劣後債)の投資スタンス

金利は極限まで低下しており、日本ではハイイールド債市場が発達してなく、信用スプレッドが乗った社債がほとんどない状況下において、今回のソフトバンク社債は貴重な高金利社債です。

もちろん高金利は高リスクの裏返しです。約7年という長めの年限であり、金融緩和期はレバレッジをかければかける程に得をする側面がありますが、財務状態がよくない企業は金融危機的な状況になると脆弱です。

申し込みは100万円以上100万円単位です。デフォルトの可能性を考慮して、あくまで資産の一部を投資するのが無難です。丸々返ってこなくても問題ない範囲で購入しましょう。

ソフトバンク株式会社第1回無担保社債(劣後特約付)は、大和証券、三菱UFJモルスタ証券、みずほ証券、SMBC日興証券、SBI証券などで購入できます。利払日は年2回(毎年6/19、12/19)です。

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