株式のPBR(株価純資産倍率)の真実・計算まとめ

更新日:   資産運用・マーケット・経済

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フェラーリ風のPBRという文字のロゴ

PBRとは株価純資産倍率であり、「PBR=株価÷一株当たり純資産」で計算される指標です。PBRを見ると、「現在の株価は純資産に何倍のプレミアムが上乗せされているか」がわかります。

一般的にはPBRが低いと純資産に比べて株価が低くて割安、PBRが高いと割高とされます。PBRが低い銘柄が高パフォーマンスとなる「低PBR効果」が観測される時期もあります。

PBRは愛好家が多い指標です。私も好きな指標です。

しかし、単純に低PBRの銘柄は良い株式と言えない場合もあります。公表されているPBRをそのまま鵜呑みにすると危ない場合があります。PBRの取扱いの留意点についてまとめます。

低PBR銘柄・高PBR銘柄の特徴

低PBR

PBRが低い場合には、大別して以下の3つのケースがあります。

  1. 株価が低すぎて割安である。
  2. 今後、損失が発生して純資産が減少することが織り込まれている。
  3. 資産の中身がヤバイ。

将来業績が悪化したり、資産に不良資産が潜んでおり、時価評価すると低PBRではない銘柄は低PBRでも避けるべきです。注目度が低くて割安になっていたり、不当に将来が悲観されて低PBRになっている銘柄は良い低PBRです。

例えば、スカイマークのPBRは0.41倍ですが、膨大な違約金や今後の業績悪化が見込まれているからです。割安だからというより、懸念がある低PBRです。

高PBR

逆にPBRが高い銘柄には、大別して以下の3つのケースがあります。

  1. 株価が高くて割高である。
  2. 今後、利益が上昇して純資産が拡大することが織り込まれている。
  3. 資産の中身がいいね!

成長性が高くて利益が拡大する銘柄や、資産に含み益があり、時価評価すると高PBRではない銘柄は高PBRでも問題ありません。例えば、FacebookのPBR、GoogleのPBRはかなり高めですが、今後の成長が見込まれているからです。

ただし、成長性・収益性が評価されている高PBR銘柄は、成長性・収益性が悪化すると株価が大きく下落する可能性があります。過大に評価されている高銘柄は避けるべきです。

PBRに着目して個別株投資に際して行うべきチェックは、(1)今後の業績見通し、(2)資産の中身に対するチェックです。

古民家

今後の業績の見通しをチェック

当たり前の話ですが、株式購入を検討する場合、過去の業績の推移と今後の予想、業界動向、企業動向などをチェックして今後業績が減速しないかをチェックする必要がありますね。

数式を延々と述べるのは避けて結論を述べると、理論上は資本コスト(投資家の要求利回り)に比べてROEが低いと低PBRとなり、資本コストに比べてROEが高いと高PBRとなります。

資本コストは不況期・投資家のリスクテイク意欲が低い時・市場の混乱時・金融危機時などは高くなり、PBR・株価が低くなる要素となります。例えば、2002~2003年、2008~2009年のような状況です。

逆に好況期・投資家のリスクテイク意欲が高い時・信用緩和期などは、資本コストが低くなり、PBR・株価が高くなる要素となります。例えば、2005~2007年、2013~2014年のような状況です。

資産の中身をチェック

資産の中身を調べる必要があります。企業は会計ルールに従って貸借対照表に資産を計上していますが、実際には計上されている金額程、価値が無い資産がある場合があります。

資産を現金化・時価評価するとどの程度の金額になるか、資産をどのように活用するのかという観点で、在庫、売掛金、有価証券(関係会社株式の時価などは要チェック)、のれん、土地などを見ていきます。

計上されている金額ほど価値がない場合

わかりやすく言うと、100万円の家具を買えば、資産に100万円が計上されますが、1年経ったらそれはもはや100万円の価値はありません。5000万円で資産に計上されている土地が4300万円しか価値がないこともあります。

例えば、以下は6月にとある雑貨屋で撮影した写真です。

ワールドカップ関連グッズ

大きなスペースを取って、ワールドカップ関連グッズが販売されていました。これらはワールドカップが終了してまだ売れ残っていたら、盛大なゴミになってしまうわけですね。

PBRのB(資産)に不良資産がたくさんあると、見かけ上はPBRが低くても、時価評価した実質PBRはあまり低くないということがあります。そうだと、やがて減損に追い込まれて一気に業績が悪化する場合もあります。

計上されている金額よりも価値が高い場合

現在の会計基準では、保有する不動産に大きな含み損がある場合は、減損(含み損を実現損失として)計上することが要求されます。

一方で、含み益の方は、売却しない限り、実現利益にすることができません。含み損のある不動産は、減損によって簿価を引き下げる一方で、含み益のある不動産はそのまま温存されて、含み益が累積していくケースがあります。

例えば、大手不動産会社のPBRは高いです。7月23日時点のデータでは、三菱地所2.4倍、三井不動産2.6倍、住友不動産2.8倍です。

しかし、公表されているPBRはあくまで貸借対照表に計上されている純資産であり、保有している不動産の含み益は反映されていません。

含み益を反映させると、三菱地所1.0倍、三井不動産1.3倍、住友不動産1.1倍です。見かけ上はPBRが高くても、資産を時価評価した実質PBRは高くないという例です。

まとめ

PBRは基本的には低い方が望ましいです。低PBR効果がある時期もあります。

しかし、株式の銘柄評価に際しては、単にPBRの水準だけで株価水準の是非を判断しない方が無難です。

名目上のPBRを鵜呑みにするのではなく、名目ほど価値の無い資産があったり、収益性が悪化するためにPBRが低いのか、実力よりも株価が低く評価されている真の割安か、分析することが重要です。

個別株式投資においては、単に数字・指標に出てこない部分の評価が最も重要ですね。

PBRと並ぶ株式の代表的指標であるPER、ROEについては以下にまとめています。

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