JPX日経インデックス400というROEの高さに着目した新しい株価指数(スマートベータ)が誕生したように、ROEに対する注目が上昇しています。ROEとは自己資本利益率であり、株主から見た投資効率を表す指標です。
計算式は、「ROE=当期純利益÷自己資本」です。PBR・PERは低ければ低いほど割安とされますが、ROEは高ければ高いほどよ良いとされます。
ROEの計算式は更に細分化できます。「ROE=当期純利益÷売上高×売上高÷総資産×総資産÷自己資本」です。
つまり、「ROE=当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」です。
ROEには収益性・資産効率・財務に注目した指標
当期純利益率は、売上高から利益を作る力、収益性を示します。
総資産回転率は、売上高が資産の何倍あるかであり、資産に対してどの程度大きな売上高を上げたのか、資産を有効活用しているかの資産効率を示します。ひとことで言うと、「資産を売上高に変える力」です。
財務レバレッジ比率は、自己資本に対して何倍の借り入れをしているのかの数字です。自己資本(株主資本)に大して、どの程度資産が大きいのか、借入金などの負債をどの程度使っているのかを示します。
つまり、ROEが高い企業というのは、利益率が高いか、資産効率が良いか、借入額が多いかのいずれかです。逆にROEが低い企業は、利益率が低いか、資産効率が悪いか、借入額が少ないかのいずれかです。
利益率や資産効率が良くて高ROEの企業は優良ですが、ただ単に借入額が多くてROEが高くなっている企業は要注意です。
ROE=PBR÷PER(PBR=PER×ROE)
ROEは「EPS÷BPS」という計算式でも表現できます。この計算式を変形すると「ROE=PBR÷PER(PBR=PER×ROE)」となります。
この式は単純ですが、深いですね。例えばPER15倍・ROE3%だと、PBR0.45倍、PER15倍・ROE20%だと、PBR3倍です。
PERが一定だと、ROEが高くなればなる程にPBRが高くなります。一般論としては株価指数は同じPERに収斂しがちなので、低PBR=低ROE、高PBR=高ROEの傾向にあります。
PERが一定だと、ROEが高くなればなる程にPBRが高くなり ます。利益に対する評価が同じならば、 より効率的に収益を上げる企業に高いPBRがつくということで、 PBRは資産の有効活用度を示しています。
PBR | PER | ROE |
---|---|---|
0.50 | 15.0 | 3.3% |
1.00 | 15.0 | 6.7% |
1.50 | 15.0 | 10.0% |
2.00 | 15.0 | 13.3% |
2.50 | 15.0 | 16.7% |
3.00 | 15.0 | 20.0% |
ROEが一定だと、PERが高くなればなる程にPBRが高くなります。資産効率が一定だと仮定すると、PBRとPERは同じ意味(投資家の評価)になるというニュアンスがあります。
PBR | PER | ROE |
---|---|---|
0.75 | 5.0 | 15% |
1.13 | 7.5 | 15% |
1.50 | 10.0 | 15% |
1.88 | 12.5 | 15% |
2.25 | 15.0 | 15% |
2.63 | 17.5 | 15% |
PBRが一定だと、ROEが高くなるほどPERが低くなります。資産に対する評価が同じならば、より効率的に収益を上げるほどに利益に対する割安感が高くなることを示しています。
PBR | PER | ROE |
---|---|---|
1.00 | 20.0 | 5.0% |
1.00 | 13.3 | 7.5% |
1.00 | 10.0 | 10.0% |
1.00 | 8.0 | 12.5% |
1.00 | 6.7 | 15.0% |
1.00 | 5.7 | 17.5% |
理想的には、PBR・PERが低くてROEが高く、かつROEの中身が低財務レバレッジ・高利益率・資産効率性良好だとベストです。しかし、そういう企業は多くありません。中小小型株はそういう銘柄を探すのが面白いです。
ROEの改善策
ROEを高めるには、以下の3つの手段があります。
1.純利益率の上昇
コスト削減、不採算部門の撤退、利益率の高い高付加価値品・競争力のある製品の比率の引き上げ、競争力を高めるためのM&Aなどによって、利益率を上げることが高ROEにつながります。
わかりやすいところでは、メルセデス・ベンツやルイ・ヴィトンなどの高級ブランドは、非・高級ブランドよりもかなり高いマージンが乗っていますね。アパレルや雑貨の高級ブランドの原価は、恐ろしい数字になりそうです。
2.総資産回転率の上昇
売上高の上昇、遊休資産の売却、増配・自社株購入などによって、回転率を上げることができます。
小さい資産で大きな売上高が上げられるような効率の良いビジネスを行うことが重要ですね。
3.財務レバレッジの上昇
借入金を増やしたり、自社株買いで株式を消却すると財務レバレッジが上がります。借入・社債発行を原資とした自社株買いを行う企業もあります。最近はリキャップCBが増加してきました。
ただし、財務レバレッジがやたらと高い企業は、業績・信用が悪化すると一気に危機的状況に陥るリスクがあります。財務の健全性の低下が行き過ぎるのは問題ですね。
まとめ
収益性・資産効率が良く、「総資産の伸び<売上高の伸び<利益の伸び」の好循環を作っている良い高ROEの企業は望ましい状況です。
日本の金利が世界に比べて低い時期は、日本は資本コストが低いので低ROEが許容されるという意見がありました。しかし、依然として日本は相対的に低金利ですけれども、超低金利は世界的現象となっています。
日本の低ROEは売上高利益率の低さに由来していると考えるのが素直であり、将来的な業界再編の余地は大きいのかもしれません。銀行や損保が3メガ体制になったように、各業界でM&Aが活発化する可能性はありそうです。
安倍内閣が発表した日本再興戦略(改訂2014年)では、「コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROE(株主資本利益率)の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していく」と明記されました。
この方向性が強化されていくのは、日本株にはプラスでしょう。
ROEと並ぶ株式の代表的指標であるPER、PBRについては以下にまとめています。

