ソフトバンクが社債を発行します。久しぶりのプレーンな個人向け社債で、愛称は「福岡ソフトバンクホークスボンド」です。
正式名称は「ソフトバンクグループ株式会社第51回無担保社債(社債間限定同順位特約付)」です。
期間は約7年(2024年3月15日償還)であり、年2.03%の利率となっています。
ソフトバンクが2017年3月に発行する社債は、金利がかなり高めなのが魅力的です。
本債券を購入すると、「フェイスタオル(今治タオル)」 がもれなくプレゼントされます。
ソフトバンクとは
言わずと知れたソフトバンクは、移動通信などを展開する総合通信会社です。パソコン用パッケージソフトの流通業から事業を開始し、2001年9月よりブロードバンド総合サービス「Yahoo!BB」を開始しました。
2004年7月に固定通信事業会社の日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)、06年4月に移動通信事業会社のボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)を買収しました。
グループ全体の経営戦略としてネット関連事業を軸に、多様な収益基盤を確立しています。
国内で移動・固定通信サービスを提供するソフトバンクモバイルを主軸に、インターネット上で広告事業を行うヤフー、スマートフォン向けオンラインゲームを配信するガンホー・オンライン・エンターテイメントやSupercellなどの有力子会社を有しています。
2013年7月には 米国の大手移動通信事業者である Sprint Corporation(スプリント)、翌14年1月には米国の携帯端末卸売会社のブライトスターを買収し、子会社化しています。
「ネットの世界ではアジアを制するものが世界を制する」との考えのもと、中国企業への出資を中心にアジアでの戦略的シナジーグループの形成を進めてきました。
最近は欧米企業の買収も積極化させて世界規模での「情報革命」を進めています。IoT時代を見据えた長期的戦略として、同分野の半導体設計でマーケットを牽引するARMを買収しました。
事業別売上構成比(2017年3月期1Q)は、国内通信事業36%、スプリント事業39%、ヤフー事業9%、流通事業14%、アーム事業1%、その他(プロ野球球団経営他)事業1%です。
ソフトバンクは、銀行借入だけではなく、社債・劣後債によるファイナンスを積極的に活用して資金調達しています。
福岡ソフトバンクホークスボンドの分析
高金利定期預金との比較
ソフトバンク 第3回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)は最長25年ですが、5年を超えると早期償還される可能性があります。
現在の5年もの高金利定期預金は、大阪市近辺に在住または勤務している方ですと、大阪協栄信用組合で1000万円以上預け入れると年0.60%です。10年ものは0.7%です。
全国的な銀行等のネットバンキングでは、5年ものですとSBJ銀行が年0.30%です。
今回のソフトバンク社債の利率は2.03%であり、ノーリスクの定期預金を大きく上回っています。
定期預金との利回り格差を見て、デフォルトリスクを考慮すると利率は妥当かという観点で検討することになります。
過去のデフォルトの確率
債券格付はA-(JCRより取得予定)です。発行体格付と同様です。格付の見通しは「安定的」です。ちなみにJCRはR&Iよりもワン・ノッチ格付けが高い傾向にあります。
JCRの格付けはR&Iよりワンノッチ(1つ)高いという企業は結構あります。ソフトバンクがR&IではなくJCRから格付けを取得予定というのは、ソフトバンク側に立つと意図はよくわかります。
Moody’sのソフトバンクの発行体格付はBa1(BB+)、S&PはBB+です。
JCRのA格社債(5年)の平均累積デフォルト率(2000~2015年)は0.49%でした。
JCRの見解
ARM買収に伴い、JCRはソフトバンクをクレジット・モニターに指定(見直し方向はネガティブ)していましたが、格付けはA-で据え置きになり、見通しは「安定的」に戻りました。以下の通りに評価しています。
ARM買収による様々な効果、収益財務への影響、買収資金の手当方法を慎重に確認した結果、クレジット・モニターを解除し、格付は据え置き「A-」、格付の見通しは安定的とした。
ARM 買収に伴い財務上の負担は生じるものの、ARM の潜在的な成長力、国内通信事業の安定的なキャッシュフロー、Sprint Corporation(スプリント)の収益改善の進捗、ハイブリッド証券による資本の積み上げ、資産売却の実績・方針、保有資産の状況を考慮した。
ARMは、半導体設計の分野でユーザーのニーズに応じた様々な機能を低価格で提供してきた。その結果、マーケットシェアは、スマートフォンで 95%超、車載情報機器で 95%超など他社を圧倒している。
今後、IoT(Internet of Things)の本格的な普及が始まれば、高度なセキュリティ技術を有する ARM の競争力がさらに強まる可能性がある。
変化の激しい業界であり、先行きに対して慎重な見方も必要ではあるものの、IoT という大きな変化の中で、ARM の潜在的な成長力は大きいと見ている。
国内通信市場では、MVNO(格安 SIM)の普及が徐々に進んでおり、競争状況の変化について注意が必要ではあるが、大型の設備投資は一巡しており、当面、高水準のキャッシュフローが安定的に確保できる状況にある。
スプリントは、依然として最終利益は赤字であるが、経営改革は着実に進捗している。
ネットワークの品質改善が進みつつあり、ポストペイド携帯電話の純増数、解約率の改善につながっている。近い将来、連結への収益・キャッシュフローの貢献も期待できるようになるだろう。
ARM 買収の投資総額は約 3.3 兆円と巨額であり、多額ののれん計上も見込まれる。一方でハイブリッド証券の発行により財務内容への影響が一部軽減される。
また、Alibaba Group Holding Limited(アリババ)を中心に多額の上場有価証券を保有しており、財務上のバッファとして評価できる。
アリババ株式など一連の資産売却により投資の回収や含み益の実現も行っている。今後も継続的な資産売却によって財務の改善が期待できよう。
JCRはソフトバンクグループ株式会社第51回無担保社債(社債間限定同順位特約付)については、長期発行体格付と同じ「A-」としています。その理由は以下のとおりです。
通信、ネット関連などの事業をグループ会社で展開する持株会社である。
投資事業にも積極的であり、グローバルなテクノロジー分野への出資を目的に「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の設立を予定している。本ファンドによる投資状況について注視していきたい。
16年9月には半導体設計を行う英アーム社の買収を実行した。買収金額は約3.3兆円と巨額であり、財務上の負担は生じたものの、アーム社の潜在的な成長力は大きいと判断している。
国内通信事業では、MVNO(格安SIM)との競合に注意は必要であるが、大型の設備投資は一巡しており、当面、高水準のキャッシュフローが安定的に確保可能な状況にある。
スプリント事業は、経営改革が着実に進捗しており、連結への収益・キャッシュフローの貢献も期待できる状況になりつつある。
アリババ株式を中心に多額の上場有価証券を保有しており、財務上のバッファーとして評価できる。17/3期にはアリババ株式など一連の資産売却により投資の回収や含み益の実現も行っている。
国内通信事業を中心とした安定的なキャッシュフローなどにより財務改善が徐々に進むと見ている。
同じ格付の社債、店頭売買参考利回りとの比較
日本証券業協会のデータでは、JCRのA格社債(7年)の複利利回り平均値は0.488%です。
ソフトバンク社債の店頭売買参考統計値利回り平均(複利)は、残存期間約6年1ヶ月もの(2023/04/20償還)が1.863%、残存期間約9年1ヶ月もの(2026/04/20)が2.461%でした。
ソフトバンクの財務状況
財務指標
自己資本比率は10.0%、有利子負債/EBITDA 倍率4.3倍5.4倍、純有利子負債/EBITDA 倍率4.3倍です。
インタレスト・カバレッジ・レシオ 5.8倍、デット・エクイティ・レシオ4.2倍、ネット・デット・エクイティ・レシオ3.3倍です。
非常に高いレバレッジをかけており、低金利の波に乗ってM&Aによる成長を加速しています。
レバレッジ経営の申し子であり、投資対象としては、社債よりは株式向きの企業であることは確かです。
社債及び借入金の内訳
2016年3月末のソフトバンクの短期借入金の平均利率は0.17%です。
長期借入金の平均利率は2.47%で、リース債務 (1年以内に返済予定のものを除く)は1.83%です。
ソフトバンクの有利子負債には財務制限条項が付されており、主な内容は次の通りです。
- 事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額が、前事業年度末におけるソフトバンクの純資産の額の75%を下回らないこと。
- 連結会計年度末における当社の連結財政状態計算書およびソフトバンク㈱の事業年度末における貸借対照表において債務超過とならないこと
- ソフトバンクの連結損益計算書において営業損益または親会社の所有者に帰属する純損益が2期連続損失とならないこと。
- 借入契約で定める調整後純有利子負債またはレバレッジレシオが、各事業年度末日および第2四半期末日において、それぞれ一定の金額または数値を上回らないこと。
ソフトバンク社債の投資スタンス
金利は極限まで低下しており、日本ではハイイールド債市場が発達してなく、信用スプレッドが乗った社債がほとんどない状況下において、今回のソフトバンク社債は貴重な高金利社債です。
もちろん高金利は高リスクの裏返しです。約7年という社債としては長期で、金利上昇リスクが高いです。
経営状態はわるくありません。国内通信事業は市場成熟化で増益率は鈍化しますが、米国で通信事業を手掛けるスプリントは構造改革効果で大幅増益が続く見込みとなっています。
弱点と言われてきたネットワーク(通信網)の強化に注力したことで、解約率は低下、契約者の純増減数(=新規契約件数-解約件数)はプラス基調を維持しています。
スプリント事業は減価償却費の負担が重く、営業利益といった会計上の利益貢献度は低いものの、現金ベースでの収支(現金創出力)では国内通信事業の8割程度となっています。キャッシュフロー面では問題ありません。
国内事業では、コンテンツ配信を中心にした付加価値事業の利益貢献、端末機値引き販売の抑制、そしてコスト削減で増収率を幾分上回る増益が続きそうです。
国内通信事業では端末機の値引販売を抑制した効果が想定以上に発現して、高収益となっています。
総務省の指導に沿った端末機の値引き販売抑制効果(代理店への販売奨励金減少)が想定より大きいことから従来予想を240億円増額しました。総務省の値引き規制によって、家計から携帯電話会社への所得移転が生じました。
ARMのアプリケーションプロセッサーはモバイル機器の約85%で採用され、過去5年間の本市場の年間平均成長率は30%としています。
また、今後の一段の成長に向けて今後5年間で英国におけるARMの従業員数を少なくとも倍増させる方針です。ただし、競合が台頭した場合は価格競争から利益率低下につながる可能性があります。
金融緩和期はレバレッジをかければかける程に得をする側面があり、ソフトバンクはアベノミクスの申し子的な側面があります。しかし、財務状態がよくない企業は金融危機的な状況になると脆弱です。
投資妙味はあるものの、デフォルトの可能性を考慮して、あくまで資産の一部を投資するのが無難です。全財産のうちかなりの部分を突っ込むようなことは止めましょう。
申し込みは100万円以上100万円単位です。ソフトバンクの第1回劣後債・第2回劣後債の2.5%よりは利回りが低下しています。
ソフトバンクグループ株式会社第51回無担保社債(社債間限定同順位特約付)は、SBI証券、大和証券、三菱UFJモルスタ証券、野村證券、SMBC日興証券で購入できます。
募集期間は2017年3月3日〜2017年3月15日です。利払日は年2回(毎年3月16日・9月16日)です。
SBI証券は当サイト限定でお得なタイアップ・プログラムを実施しています。なんと3,000円分で、ネット証券としては破格の内容です。
口座開設と5万円以上の入金・SBIハイブリッド預金への振替だけで、3,000円分のAmazonギフト券がプレゼントされます。
口座開設時に以下の項目(無料)に申し込めば、SBI証券に入金するだけで自動的に振り替えられるので面倒な手間はありません。
SBI証券は1000万円までは銀行預金のような公的な保護(投資者保護基金)があるので安心・安全です。銀行預金と同じで万が一破綻しても保護されます。
口座開設・維持・入出金は無料です。まだ口座をお持ちでなければ、この機会にぜひ口座開設してみてはいかがでしょうか。
↓
SMBC日興証券のネット口座は小口個人投資家でもIPOが当たるチャンスがある、信用取引の手数料が無料というメリットが有る証券会社です。今回の社債も購入できます。
2019年3月18日からは一般信用売りが導入されて、より一層便利で使いやすくなりました。
三菱UFJグループのauカブコム証券では、今回の社債の購入はできません。
ソフトバンクグループ社債(円建て)の過去の利率は下表のとおりです。
銘柄 | 償還期限 | 利率(年) |
---|---|---|
第39回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2017年9月22日 | 0.740% |
第40回無担保普通社債 | 2017年9月14日 | 0.732% |
第41回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2017年3月10日 | 1.470% |
第42回無担保普通社債 | 2017年3月1日 | 1.467% |
第43回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2018年6月20日 | 1.740% |
第44回無担保普通社債 | 2020年11月27日 | 1.689% |
第45回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2019年5月30日 | 1.450% |
第46回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2019年9月12日 | 1.260% |
第47回無担保普通社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2020年6月18日 | 1.360% |
第1回劣後特約付無担保社債 | 2021年12月17日 | 2.500% |
第2回劣後特約付無担保社債 | 2022年2月9日 | 2.500% |
第48回無担保社債 (福岡ソフトバンクホークスボンド) | 2022年12月9日 | 2.130% |
第49回無担保普通社債 | 2023年4月20日 | 1.940% |
第50回無担保普通社債 | 2026年4月20日 | 2.480% |
第1回劣後特約付無担保社債 | 2021年12月17日 | 2.500% |
第2回劣後特約付無担保社債 | 2022年2月9日 | 2.500% |
第1回利払繰延条項・ 期限前償還条項付無担保社債 (劣後特約付)(ハイブリッド債) | 2041年9月13日 | 3.000% |
第2回利払繰延条項・ 期限前償還条項付無担保社債 (劣後特約付)(ハイブリッド債) | 2043年9月16日 | 3.500% |
第3回利払繰延条項・ 期限前償還条項付無担保社債 (劣後特約付)(ハイブリッド債) | 2041年9月30日 | 3.000% |