スマートベータ(スマートβ)とは、株価指数に連動した騰落率(ベータ)を目指すインデックス運用と、株価指数を上回る超過収益(アルファ)を狙うアクティブ運用の中間的な投資手法です。
近年ではスマートベータETFや投資信託(投信)が登場しています。
GPIFが4月にスマートベータ型運用を採用したことで話題になりましたね。スマートベータについてまとめました。
目次
スマートベータと伝統的インデックスとの違い
インデックス運用の伝統的なコンセプトは時価総額に応じた市場全体のリターンに連動する運用です。
それが投資戦略として優れているとは限らないという観点から、スマートベータが登場しました。
ファンダメンタルズなどを反映した基準で銘柄選定した指数(スマートベータ指数)に連動し、TOPIX等の時価総額加重平均型株価指数よりも高い超過収益の獲得を目指す手法です。
スマートベータは、利益、営業キャッシュフロー、純資産、企業規模、配当、成長性の現在価値などの基準で構成銘柄を絞ります。
各銘柄の構成比率(ウェイト)についても、売上高やリスクなどの基準で決めるか、時価総額を使う場合でも1銘柄あたりのウェイトに上限を設けてたりします。
スマートベータの例:S&P GIVI Japan
GPIFのスマートベータ型アクティブ運用で選定されたベンチマークのうち、中身が公表されているS&P GIVI Japan(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが受託運用)を例に挙げます。
S&P GIVI Japanは、S&P GIVI グローバルのサブセットで日本市場に特化した指数です。
S&P GIVI(グローバル・イントリンシック・バリュー指数)は、本源的株式価値に基づいて指数の構成比率を決定し、低いボラティリティとパフォーマンスを実現するように設計された指数です。
指数の算出方法
低ボラティリティ達成のために、ベータ値の高い銘柄から順に時価総額の30%に達するまでユニバース(ポートフォリオに組み入れる銘柄群)から除外します。
そして、本源的価値に基づいて銘柄の構成比率を決定します。具体的には、「本源的価値=資産価値(純資産で評価)+成長機会(アナリストのコンセンサス予想から得られる予想利益の割引価値から算出)」で計算されます。
成長機会を算出する際の割引率は、過去5年間の価格リターン、リスクフリーレート、株式のリスクプレミアムから算出される株式ベータによって計算されます。
各銘柄の本源的価値は、年に2回実施する指数リバランスの際に更新されます。
組み入れ銘柄上位
S&P GIVI JapanとTOPIXの組み入れ銘柄トップ10(6月末時点)の比較は以下の通りです。
S&P GIVI Japan | TOPIX | ||
---|---|---|---|
7203 | トヨタ自動車 | 7203 | トヨタ自動車 |
7267 | 本田技研工業 | 8306 | 三菱UFJ FG |
8316 | 三井住友FG | 9984 | ソフトバンク |
8411 | みずほFG | 7267 | 本田技研工業 |
9432 | 日本電信電話(NTT) | 8316 | 三井住友FG |
7751 | キヤノン | 8411 | みずほFG |
7201 | 日産自動車 | 9432 | 日本電信電話(NTT) |
9984 | NTTドコモ | 2914 | 日本たばこ産業 |
9984 | ソフトバンク | 6954 | ファナック |
9433 | KDDI | 7751 | キヤノン |
目立つところでは、TOPIXでは2位の三菱UFJがS&P GIVIでは圏外になり、TOPIX3位のソフトバンクが9位にダウンしています。
ホンダ、三井住友、みずほ、NTT、キャノンはTOPIXに比べて順位が上がっており、日産自動車、NTTドコモ、KDDIがランクインしました。
スマートベータ型投信・ファンド・ETF
JPX日経インデックス400
スマートベータETFとしては、JPX日経インデックス400(JPX400)の認知度が最も高いでしょう。
厳密に言えばスマートベータではないという意見がありますが、スマートベータ自体、公的機関による厳密な定義があるわけではありません。
野村アセットマネジメント(1591)、日興アセットマネジメント(1592)、三菱UFJアセットマネジメント(1593)からETFが出ています。
最も流動性・純資産が大きいのは1591です。1593はauカブコム証券でフリーETFとなっており、売買手数料が無料です。
スマートベータ型投信(投資信託)としては、SMT JPX日経インデックス400、eMAXIS JPX日経400インデックス、ダイワ・インデックスセレクトJPX日経400、野村 インデックスファンド・JPX日経400などがあります。
ラッセル野村ファンダメンタル・ プライム・インデックス
ラッセル野村ファンダメンタル・ プライム・インデックスに連動するR/Nファンダメンタル・インデックスETFがあります。コードは1598です。
(※野村アセットマネジメントのNEXT FUNDSサイトより)
野村日本株高配当70
野村日本株高配当70に連動するNEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信があります。コードは1577です。
野村日本株高配当70は、国内金融商品取引所に上場する全ての普通株式のうち、今期予想配当利回りの高い銘柄のうち、原則70銘柄で構成されます。
等金額型の指数です。
FTSEやMSCI
日本株のスマートベータとしては、他にFTSE RAFIジャパンインデックス、FTSE GWAジャパンインデックス、MSCIジャパン・クオリティ・インデックスなどがあります。
年金基金向けの運用ではファンドが組成されていますが、個人向けのETFはまだ出ていません。
海外ETF
海外ETFのスマートベータの例としては、以下があります。
- グッゲンハイムS&P500イコール・ウェートETF(RSP)
- パワーシェアーズFTSE RAFI US 1000(PRF)
- ウィズダムツリー・ラージキャップ・ディヴィデンドゥ・ファンド(DLN)
- ウィズダムツリー・エマージング・マーケッツ・エクイティ・インカム・ファンド(DEM)
厳密にはファンダメンタル・インデックスETFに分類されるのかもしれませんが、スマートベータ的なETFということで。
スマートベータは伝統的インデックス運用より儲かるのか
われわれ個人投資家にとっての関心事は、「伝統的ETF・投資信託よりもスマートベータETF・投資信託の方がいいのか?」でしょう。
バックテストでは、多くのスマート・ベータ指数の長期のパフォーマンスは市場指数よりも良い数字が出ます。
これはある意味では当然です。過去データでは、伝統的市場指数よりも良い数字が出るようにスマートベータ指数を設計するからです。
今後もスマートベータの優位性が持続するかどうかは不透明です。これはクオンツ系のファンドと同じです。
特定のファクターを重視したスマートベータ関連のファンドに大量の資金が流入した場合、一時的にパフォーマンスは良くなります。
バリュー運用・グロース運用のパフォーマンスの差、低PBR効果・低PER効果などのアノマリーと同様に、有効な時期とそうではない時期が生じます。
ファクターの有効性は時期によって変わり、一つのスマートベータの優位性が持続する可能性は低いです。
また、非時価加重型の指数が常に勝ち続けるわけではなく、TOPIXやS&P500がアウトパフォームする時期も出るでしょう。
スマートベータが設計当時は伝統的インデックスを上回っているのは、伝統的インデックスがコバンザメトレーダーにカモられ続けてきたのに対して、スマートベータのバックテストにはそれがないことも要因の一つです。
スマートベータが実際に運用を開始して一定の規模になったら、伝統的インデックスと同様にカモられてパフォーマンスが悪化する可能性があります。
本質はアクティブ運用と同じ
スマートベータの本質は伝統的指数に対する超過収益を狙う点でアクティブ運用と同じです。スマートベータファンドの選択は、アクティブ運用の投資信託の選択と似ています。
投資家は投資するスマートベータがどれ程よいかを確認する必要があります。
バリュエーションの判断基準は適切か、選定している割安な銘柄には理由があるのではないか、選定していない割高な銘柄は割高でも組み入れるべきではないか、ただ単に安値の銘柄を選択していないか、良質の銘柄を見抜く基準を採用しているかなどの点に注目するのが必要です。
また、タイミングも重要になってきます。高ROE銘柄のパフォーマンスが今後良いと推測するならJPX400ETF、ラッセル野村ファンダメンタル・ プライム・ウエイトがよいならコード1598のETF、野村日本株高配当70なら1577と判断する必要が出てきます。
しかし、これらを見抜くことが出来る人は、いちいち投信・ETFを買わずに個別銘柄でアクティブ運用すればいいという話になってしまいます。
これもアクティブ運用と同じで、良いアクティブファンドを見抜くことが出来る人は、当然に良い銘柄を選ぶことができるはずなので、いちいちアクティブ投信を使う合理性はなく、株式投資をすればいいことになります。
個人的にはインデックス運用をするなら伝統的指数でよく、超過収益を狙いたいなら株式投資がいいと思います。
ただし、「個別銘柄投資にはどうにも気が乗らないが、伝統的指数よりも高い収益を狙いたい」という場合は、伝統的ETFの他に、スマートベータETFに投資するという選択もあるでしょう。
コストは上がりますが、パフォーマンスのいい時期が異なるので分散効果は出ます。
銘柄入れ替えが伝統的インデックス運用よりは多いこと、手数料が高いことがデメリットです。
新しい指数は次々に出てくるでしょうが、消えていく指数も多いでしょう。指数の取捨選択が重要になってきます。
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