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医療保険に入るべきか否か。保険会社社員が語る必要性・不要理由のまとめ

更新日: 保険

看護師

日本は世界有数の保険大国であり、多くの方が医療保険を契約しています。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(平成24年発行)によると、83.6%の世帯が医療保険に加入しています。

しかしながら、近年は保険会社出身の評論家やFPから「医療保険は不要」という意見も強まっています。医療保険の必要性について激論が交わされています。

現役の保険会社の社員から聞いた医療保険の選び方・必要性・おすすめ商品についてまとめます。

医療保険とは

医療保険とは、入院・手術・先進医療・放射線治療・特定の疾病の診断などの際に、契約に定められた保険金がもらえる保険です。

医療保険の保険料の内訳

医療保険の保険料は、「医療保険の保険料=純保険料+付加保険料」という式で決まります。

純保険料とは、危険率・安全率、支払う保険金額の予測から構成されます。どれほど入院等が発生するか、どれ程支払い金額発生するかについて、数理の専門家であるアクチュアリーが計算し、それに安全率(バッファー)を乗せて純保険料が計算されます。

実際に保険会社が契約者に払う保険金よりも純保険料は高めに設定されています。その差が保険会社の利益になります。「危険差益」と呼ばれます。

付加保険料とは、保険会社の経費となる部分で一定のバッファーを乗せて計算されます。通常、実際にかかる経費よりも付加保険料は高いです。その差も保険会社の利益になります。「費差益」と呼ばれます。

つまり、医療保険の保険料は、契約者に支払う保険金、保険会社の経費、保険会社の利益から構成されます。

契約者全体は必ず損をする

保険料の構成を見るとわかるとおり、契約者が支払う保険料は、保険会社の利益と経費が上乗せされて設定されています。

したがって、原理的・科学的・数学的に医療保険の契約者は平均的には必ず損をします。これは宝くじで国が必ず儲かり購入者全体が必ず損をするのと同じです。

契約者全体では必ず損はするが、それでも病気・事故の際にお金が支払えなくて治療が受けられないのは困るので、そのような事態がないように加入するのが医療保険になります。

余談ですが、保険の商品設計をしているアクチュアリーの資格試験は司法試験並みの難易度の非常に難しい試験です。

昔は試験日がクリスマス(12/24~12/25)という恐ろしい日程でした。「クリスマスを楽しもうとする輩は却下」と言わんばかりの戦慄の試験日設定でしたね。

最近は12月中旬となりました。私は全然クリスマスでOKなんですけどねヽ(´ー`)ノ

病院のロビー

医療保険の必要性

基本的な考え方

保険は余程のレアな事象に遭遇しない限りは損をする金融商品ですので、ほとんどの場合は損をしてもなお、ヘッジすべきリスクをカバーしているか否かが保険加入のポイントです。

発生すると経済的に大きな打撃を受けるので、損をしても止むを得ない内容であるかです。

例えば、家を買った場合は火災保険、自動車を買った場合は自動車保険が必要であることについては、異論は少なく大多数の人が入ります。

これは万が一火災等で家が全損したり、自動車事故を起こして高額の賠償金を背負った場合は、家計が大きなダメージを被るリスクがあるからです。こういうリスクは、ほとんどの場合は損をしますが、それでもなお保険に加入してヘッジすべきです。

入院時にどの程度のお金がかかるのか。

では医療保険はどうかという点です。医療保険のメインの補償は入院保障です。付随的に通院保障、手術保障、先進医療特約、特定の重い疾病の際の上乗せなどがありますが、それらはおまけであり、メインは入院となっています。

生命保険文化センターの平成25年度の「生活保障に関する調査」によると、入院時の自己負担費用は、1日平均21,000円です。

これは治療費・食事代・差額ベッド代なども含んだ合計金額です。30日入院した場合、21,000円×30日=630,000円となります。


短期入院に医療保険は必要か

高額療養費制度

公的医療保険の高額療養費制度によって、1ヶ月のMAXの医療費が決められています。2014年12月までは、70歳未満の場合は以下の通りでした。

所得区分 1か月の負担の上限額 4ヶ月目以降の上限
上位所得者(年収約770万円以上) 150,000円+(医療費-500,000円)×1% 83,400円
一般所得者 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
低所得者(住民税非課税) 35,400円 24,600円

一般的な所得の方だと、例えば、 1ヶ月間の医療費総額が50万円(3割負担で15万円)の場合、実質の負担額は82,430円となります。1ヶ月の医療費が100万円だとしても、87,430円です。1ヶ月間の医療費は最大でも約9万円という金額が目処になります。

2015年1月以降は、年収約770万円以上の所得者は負担額上限が上昇しました。逆に住民税が課税されているけれども、年収約370万円以下の所得者は負担額上限が下落します。

所得区分 1か月の負担の上限額 4ヶ月目以降の上限
年収約1,160万円以上 252,600円+(医療費-842,000円)×1% 141,000円
年収約770万円~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
年収約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
年収約370万円以下 57,600円 44,400円
低所得者(住民税非課税) 35,400円 24,600円

100万円の医療費が発生した場合、年収約1,160万円以上だと254,180円、年収770万円~約1,160万円だと171,820円になります。これまでよりはかなりの増加となります。

もっとも、上位所得者に該当するほど高い月収を得ることができるのは、大企業の会社員や公務員が多いです。大企業の多くは健保組合を持ち、公務員にも共済組合があります。

福利厚生で高額の医療費が発生した場合は給付金が出て、最終的な自己負担は月2万~5万円となる大企業・公務員が多いです。この場合はそれ程には負担は大きくありません。

高額療養費限度額適用認定証

以前は高額療養費制度があるとはいえ、最初は医療費を全額支払って、後で還付を受ける形式でした。

したがって、医療費がかかる場合は事前にまとまったお金を用意しておく必要がありました。

現在は事前に「高額療養費限度額適用認定証」の申請を行って認定証を受け取っておけば、MAXの医療費以上を支払う必要はありません

高額療養費の対象外の費用

保険外併用療養費の差額部分(先進医療費)、食費、差額ベット代は高額療養費制度の対象外です。食費は入院時食事療養費で一般人は1食あたりおよそ360円(2018年から460円に値上げ予定)となります。

住民税非課税世帯の方は、210円/1食(過去1年間の入院日数が90日超の場合は160円)です。住民税非課税世帯に属し、かつ所得が一定基準に満たない70才以上の高齢受給者は100円/1食です。

食費は入院しなくてもかかる費用で、入院時の費用は安価なので保険で備える必要性は低いです。差額ベット代は1日平均(厚労省平成24年公表)で1人部屋で7,558円、2人部屋で3,158円、3人部屋で2,774円、4人部屋で2,485円です。

差額ベッド代は個室しか開いてないなどの病院側の事情の場合、支払わなくて大丈夫です。支払う義務はありません。厚労省が文書を出しています。

ただし、病院によっては原則として受け取る方式になっている場合もあるようです。まな板の鯉状態で病院に対して弱い立場となる状態で、差額ベッド代をつっぱねるのが難しいケースもでてくるかもしれません。

虫取り小僧さんのエントリーが参考になります。また、個人差はありますが、きれいな1人部屋だと入院生活が快適になります。

ただ、1人部屋で2ヶ月入院したとしても、少し多めに1日あたり8,000円×60日=48万円に過ぎません。長期入院だと負担が重くなりますが、短期入院だと負担はそれ程には重くありません。

医療保障の必要性は医療費が際限なく膨らんでお金が足りなくなる事態を避けることです。

日本の場合は公的社会保障の高額療養費制度で1ヶ月当たりの医療費の上限が決まっているので、短期入院に関しては一定程度の貯金があれば十分にカバーできます。

医者と患者

疾病手当金

傷病手当金という所得保障制度もあります。会社員が病気や怪我などで就業できない状態になった場合に支給される給付金です。

会社を休んで4日目から1年半までが支給期限で、その間は手取り額のおよそ7割が毎月支給されます。傷病手当金の計算方法は以下の通りです。

・支給額=標準報酬日額(標準報酬月額を30で割った額)×3分の2×支給日数

自営業者・個人事業主は、疾病手当金がないので、収入が止まるリスクも考慮する必要があります。会社員の場合は、勤労期に入院しても傷病手当金の支給がありますので、1年半以内の入院には保険なしで十分に対応可能です。

短期入院を繰り返す場合

短期入院を繰り返したら、結果として長期間の入院となる場合があります。しかし、ここは「1入院あたりX日」という制限に引っかかります。

例えば、1入院あたり60日間の医療保険に加入していて、病気で40日間入院して無事退院したものの、症状が悪化して再び入院して50日入院したとしましょう。

この場合、前回の病気が完治していないと見なされ1入院とカウントされて、2回入院しているにもかかわらず、90日分ではなく60日分しか出ません。

再入院の理由がまったく違う病気なら新たな入院として1日から新しいカウントが始まりますが、そうでない場合は以前の入院日数を引き継ぐシステムになっています。

ただし、退院から再入院までの期間が180日以上空いていれば別の入院としてカウントされます。

有識者の意見

ライフネット生命の岩瀬大輔氏(代表取締役社長兼COO)は、著書「生命保険のカラクリ」で次の通り述べています。

「現状の入院日数をベースにした短期入院の医療保険商品は、本当に必要なものだろうか?割高な保険料を払ってまで、日帰り入院に対する5000円、1万円の給付を求める、消費者の不合理な心理を刺激するのは適切なことなのだろうか」

長期入院に医療保険は必要か

長期入院の可能性

長期入院については保険でカバーする合理性があります。いくら高額療養費や傷病手当金があるとはいえ、入院期間が5年10年に及ぶとお金が足りなくなる可能性が出るからです。

1年半超の入院となると、サラリーマンでも傷病手当金の支給がなくなり、支出のみが続く状態に陥ります。

長期入院の可能性は極めて低いですが、入院1年半超患者の74%は5年以上、51%は10年以上入院しています。完治が難しい病に罹患してしまうと、入院が非常に長引く恐れがあります。

退院患者の平均在院日数を傷病分類別にみると、長い順のトップ3は、「精神及び行動の障害」の 296.1日、「神経系の疾患」の76.2日、「循環器系の疾患」の45.3日です。

厚生労働省の患者調査(平成26年)によると、平均入院日数のトップ3は以下の通りです。

病名 平均在院日数(全世代)
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 546.1日
その他の精神及び行動の障害 202.4日
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) 113.4日

1位の多くの部分を占める統合失調症は、全人口の1%に発症するとされている恐ろしい病です。長期入院の多くは精神疾患が原因となっています。

これ以外にも長期入院となる傾向がある疾病もあります。血管性及び詳細不明の認知は平成23年のデータでは359.2日、アルツハイマー病は236.3日です。

また、ここでの「平均在院日数」とは、ひとつの病院に入院してから退院するまでの平均日数です。中には他の病院に入院する患者や、入退院を繰り返す患者もいます。

患者調査(平成20年)によると、退院者のうち、転院してきた患者は4.6%、転院していった患者は5.4%です、転院してきた患者のうち転院していった患者は30.5%です。

万が一統合失調症に罹患して入院が長期化した場合、いくら1ヶ月あたりの上限が高額療養費で決まっているとはいえ、経済的なダメージは大きいです。ここに医療保険で備える意義は出てきます。

しかし、大多数の保険は1入院あたり60~180日であり、長期入院に対応していません。1入院あたりの日数が多いタイプでも、入院の通算限度は700~1,095日です。大多数の保険は最長で3年であり、超長期入院リスクをヘッジできません。

なお、ごく一部の特定の団体の構成員のみが加入できる定期タイプの共済で、契約期間が1年で、1入院の限度は設けられているものの、1年ごとに更新していくため、通算支払限度という概念のないものがあります。

これは凄まじい程に長期入院に対応できます。例えば180日・1年契約で通算限度がない場合、1日1万円の共済に入っていると、長期入院の場合1年間で180万円の共済金が出ます。

1ヶ月あたり15万円(180万円÷12ヶ月)であり、医療費用をほぼカバーできてしまいます。

定期タイプで最長80歳までなどとなっていますが、大きな長期入院リスクヘッジ機能があります。ただし、モラルリスクが高いので、誰でも入れる保険・共済ではこのような商品はありません。

なお、共済期間が終身のものは、通算支払限度がない共済はありません。終身だと収支が成り立たなくなってしまうからでしょう。

患者

障害年金

長期入院となる状況では、障害年金を受給できる可能性があります。精神疾患も対象です。

自営業者・個人事業主・パートなど国民年金加入者の場合、1級と2級に認定されたら、障害基礎年金が支給されます。一定の受給要件障害認定基準があります。

障害基礎年金の金額(2016年4月以降)は以下の通りです。

  • 1級:年975,125円
  • 2級:年780,100円

子供がいたら金額が加算されます。第1子・第2子はそれぞれ224,500円ずつ加算され、第3子以降はそれぞれ74,800円加算されます。

会社員など厚生年金加入者の障害年金は、老齢年金同様に2階建ての構造になってます。障害厚生年金の金額(2016年4月以降)は以下の通りです。

  • 1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金224,500円
  • 2級:報酬比例の年金額老齢厚生年金額+配偶者加給年金224円
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保障額585,100円)

老齢厚生年金額は、厚生年金加入期間中の平均給与と加入年数に基づき計算されます。加入期間が25年未満でも、加入期間25年(300ヶ月)で計算されます。極端に言うと入社してすぐに障害状態になっても、300ヶ月で計算されます。

障害厚生年金の方は、基礎年金にはない3級があるのが特徴です。また、3級より軽い障害の場合でも、障害手当金という一時金が支払われます。

就業不能保険

なお、長期入院に対応する保険としては、就業不能保険という保険もあります。しかし、長期間にわたって就業不能に陥るケースでは、障害年金1級の受給が想定できます。

自営業者・会社員のいずれも、障害等級が1級レベルであれば国以外に都道府県や市区町村の補助も出ます。公的社会保障で細々と生活することは可能です。

それを考慮すると就業不能保険は不要だと考えています。お金が有り余っていれば別ですが、そこまで一個人として備えるのかという問題になります。

先進医療

先進医療とは、高度な医療技術が用いられており、保険給付の対象とすべきか否かについて、評価を行うことが必要な療養です。全額自己負担となります。

先進医療特約は、この先進医療を受けた場合、その費用が1000万~2000万円まで出る特約です。商品によって上限は異なります。保険料は月数十円~100円程度です。

2016年4月1日現在では、先進医療には97技術が指定されています。しかし、実施には厳しい制限が付いており、医師が必要性と合理性を認めた場合に限られます。

また、1つの治療で平均10ヵ所の医療機関に止まり、疾病によっては全国で1つしかないこともあります。先進医療を受けたくても近くに受けられる病院がないことも多々あります。

100万円以上の費用がかかる先進医療は、重粒子線治療と陽子線治療の二つのみです。この2つが突出しており、ツートップ的な存在です。

先進医療の中で最も費用がかかる、がんの重粒子線治療(約304万円)を行っている医療機関は、2016年9月時点では全国でたったの5つです。群馬・千葉・神奈川・兵庫・佐賀です。受けるには遠征する必要が出る人も多いでしょう。

陽子線治療(約259万円)を行っている医療機関は2016年9月時点では全国でたったの11つです。北海道・福島・茨城・千葉・長野・静岡・福井・愛知・兵庫・岡山・鹿児島です。

この2つを受けられる医療機関が近くにない場合は、先進医療特約のメリットは大きく減退します。もちろん、先進医療の内容は日々変わっていくので今は受けられる高額先進医療が近くになくても、今後入る可能性はあります。

重粒子線治療と陽子線治療以外では、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が、給付事例が多くて費用が高めとなっています。

しかし、今後は混合診療が解禁されていく方向性なので、先進医療なるものがいずれ消滅へと向かう可能性があります。

将来的には、昔そんなのがあったね~という存在になる可能性があるでしょう。現時点では、医療保険に加入するならば付加を検討し得ます。

病院の建物

健康保険制度(公的医療保険)の改悪リスク

健康保険制度(公的医療保険)が改悪されて医療費の自己負担が30%から40%や50%に上がったり、高額療養費制度の上限が上がるので、医療保険が必要だという意見があります。

高額療養費の上限引き上げについては既にその方向で検討されています。

自己負担

自己負担の上昇は重要ではないと考えます。いくら自己負担が30%から50%に上がろうが、高額療養費の上限(通常は1ヶ月あたり約9万円)に満たない小額の医療費は貯金で払えばいいだけだからです。

例えば、厳しい財政状態で公共料金や交通料金が上がる恐れがあるので、それに備えて保険に入るかというと、誰も入りません。貯金で払えばいいとなります。

やや極端ですが本質的にはこれと同じであり、医療費の自己負担の上昇は、経済的には単なるインフレと同様であり、保険でカバーすべきリスクではないと考えます。

これを保険でカバーしようとするならば、医療費よりもまず物価全般のインフレリスクを真剣に心配してヘッジすべきです。

他の確実に発生する生活費の上昇には注目せずに、高額療養費の上限に達しない小額の医療費だけに特化して、値上がりリスクを保険でカバーすべきというのはやや不思議です。

高額療養費

他方、高額療養費の改悪は重大な影響が及ぶ可能性があります。高額療養費制度がなくなったり、例えば1ヶ月の上限が100万円になったりしたら、医療費を貯金で賄えなくなるリスクが上昇するからです。

ただし、2015年1月からの改正内容は、年収約770万円以上の中所得者以外は影響が小さいです。今後も非高額所得者のMAXが派手に上昇するリスクはそれ程大きくないと思われます。

政府も高額療養費制度が果たしているリスクヘッジ機能を高く評価しているからです。

日本政府の財政問題には諸説ありますが、日本国債発行に基づく政府支出が民間部門の超過貯蓄(貯蓄投資差額)を創り出し、その超過貯蓄が日本国債の購入原資になるという自己完結プロセス・鉄壁の資金循環構造が確立されています。

また、外貨建て国債をほとんど発行していない日本政府の債務は、基本的にはインフレで解消できます。20世紀を代表する偉大な経済学者、ミルトン・フリードマンは、インフレは「法案の要らない課税」と述べています。

反対意見が多くて有権者受けが悪い歳出削減・増税と、インフレによる実質的債務削減のどちらを政府は選択するかと言えば、後者の可能性が高いです。実際にわが国はそれに向けてあらゆる手段を講じています。

したがって、高額療養費制度の大々的な改悪の心配はそれ程には大きくないと思います。

逆に言うと、そうなる状況というのは、かなりの高インフレで社会的に騒然となって経済が大混乱に陥っており、政府がインフレ抑制・財政赤字削減に本格的に乗り出さざるを得ないような状況です。

そのような状況では大幅な円安になる可能性が高いです。高額療養費制度の改悪に備えて医療保険に入るより、円安・高インフレに備えた資産運用の方に力を入れる方がいいと思います。

高額所得者は今後も改悪のターゲットになるでしょうが、年収が約770万円以上の方であれば、貯蓄はそこそこあるでしょうし、サラリーマンなら手当もあるので、そもそも医療保険の必要性は高くはありません。

まとめ

医療費の自己負担の上昇は、経済的には単なるインフレであり、高額療養費の上限に達しない小額の医療費だけに特化して、値上がりリスクを保険でカバーするのは経済的に合理的ではないと考えます。

また、更なる高額療養費の改悪は重要な問題ですが、改悪はあったとしても高所得者が1ヶ月あたり10数万円程度の上昇といったマイルドな水準になると思います。

高額療養費が大々的に改悪される状況は、日本がいよいよ「詰み」へと向かう状況であり、許容できない高インフレが進行している可能性が高いです。1入院5000円・1万円といった医療保険はあまり役に立たなくなっているでしょう。

それを本気で心配してリスクヘッジするならば、医療保険加入よりもインフレリスク・円安リスクのヘッジに本格的に取り組んだ方がいいでしょう。

ただし、今後の高額療養費制度の改悪が心配で仕方がなく、入院リスクを医療保険でヘッジしたいという場合は加入を検討しうるかもしれません。


老後に終身医療保険で備える?

老後の医療費は、年齢や収入によって異なりますが、高額療養費制度が適用されるので、一般的には月に6万円あれば充足できます。

少子高齢化で支給開始年齢の引き上げやマクロスライドの過激化など公的年金の改悪はあるでしょうが、全くなくなることは考え難いです。しかも、70歳以上は高額療養費制度が手厚くなります。

また、20~30代の若年層が老後の医療に備えて若いうちから終身医療保険に加入するのは不合理な側面が有ります。医療技術の進歩による保障の陳腐化、新たな魅力的な保険の出現、インフレなどのリスクがあります。

女性看護師

予定利率上昇リスク

終身医療保険は、アクチュアリーや商品設計チームが数理計算して、予定危険率・予定利率・予定事業費率を設定し、それらに基づいて商品設計されています。

予定利率は低ければ低いほど保険料は上がります。

現在は空前の低金利で予定利率が低いため、終身医療保険は不利です。終身医療保険は、契約時の予定利率で一生の保険料が決まります。

将来的に金利が上昇した場合、予定利率が上昇して、より安価な終身医療保険が出る可能性があります。

保障内容の陳腐化リスク

新商品が開発されていくと、今現在の保障内容を終身に渡って固定する終身医療は不利になります。

保障内容が陳腐化するリスクが高いです。20~30年前の医療保険を今見ると、使いものにならないものも多いですね。

インフレリスク

2%のインフレが35年間続くと、35年後に物価は約2倍になります。つまり、1入院あたり1万円・1手術20万円・一時金100万円という医療保険は、インフレが続くと、30~40年後には価値が激減するリスクがあります。

若いうちは入院費は非常に少ないです。50代以降から上昇し始めて、65歳以降に医療費は加速します。

20~30歳で若いうちに終身医療保険に加入しても、給付はほとんど受けられず、本格的に受けられるのは30~45年後というのが多数です。

実際に保険金を受け取る30~45年後には、インフレが続いていると価値が半分しかないという事態になります。極めて穏健なマイルドインフレでもです。高インフレが続いたらあっという間に円の価値はなくなってしまいます。

終身医療保険はインフレに非常に弱いのです。終身払いではなく、60歳払い済みの保険は若いうちに支払う保険料が増加するため、よりインフレに脆弱になります。

貨幣錯覚」という現象があり、日本では長年デフレ経済が続いたこともあり、名目と実質を分けて考えなくなっていますが、今後は実質価値に目を向けることが重要です。

まとめ

終身医療保険には以下のリスクがあります。

  • 予定利率上昇があると、自分の保険が割高になってしまう
  • インフレになると実質的に損
  • 医療技術の進歩による保障陳腐化リスク
  • 一生涯保険料が同じことの代償として、契約からしばらくの間はかなり割高な保険料を支払う必要がある。

将来、終身医療保険の予定利率が上がって解約して乗り換えようと思ったら、それまで支払った割高な保険料はパーになります。

「一生涯の安心」が「割高で時代遅れの保障」「将来役立たずの保険」になってしまうリスクがあるのが終身医療保険です。状況の変化に脆弱な保険です。


医療保険の必要性まとめ

医療保険は必要?不要?

これまでの議論をまとめると、以下の通りです。

高額療養費制度の存在によって、短期入院に医療保険で備える必要性は低いです。非高額所得者は高額療養費制度の大々的な改悪リスクは小さいと考えます。

大々的に改悪されるときは日本が終わりに近づいている時で悪性の円安・インフレが進行しており、医療保険は役に立たない可能性が高いです。

長期入院だといくら高額療養費があっても、収入が途絶えて医療費が膨らむ可能性があるため、医療保険で備える必要性が出てきます。

ただし、長期入院に陥る状況だと、障害年金を受給できる可能性があり、障害年金で細々と生活することは可能です。

もっとも、公的社会保障の改悪リスクがかなり気になり、医療保険で一定のリスクヘッジをしたら精神的に効用があるという場合は、医療保険で備えるという選択肢もあるでしょう。

終身医療保険には、医療技術の進歩による保障陳腐化リスク、インフレリスク、金利上昇リスクがあります。若年層が老後の医療に備えて終身医療保険を契約するのはリスクが大きいです。

現在、一般人でも入れる医療保険は、支払い上限が1000日前後がほとんどです。したがって、最大でも約3年間の入院しか保障されていません。

サラリーマンであれば1年半未満の保障の意義は乏しいことから、1入院あたり1000日まで保障される長期入院型の保険で、1年半~3年の入院に医療保険で備えるかどうかが、医療保険加入の是非における主な論点となります。

個人事業主であれば貯蓄が消滅する期間~3年の入院に医療保険で備えるかという観点で加入を検討することになります。

ただ、本当のリスクは3年超の限りない長期入院であり、1~3年のゾーンのみをあえて保険でカバーする意義がどの程度あるかというと、微妙です。

通算支払限度がない医療共済に入れる場合

特定の団体の構成員のみが加入できる定期タイプの共済で、契約期間が1年で、1入院の限度は設けられているものの、1年ごとに更新していくため、通算支払限度という概念のないものがごく一部にあります。

1年ごとに契約がリセットされるため、1入院180日だと、入院している限り毎年180日分の入院共済金が得られます。1万円の契約だと毎年180万円(1ヶ月換算で15万円)です。

これは前述の通り、長期入院リスクを一定の年齢まで完璧にヘッジできるため、加入を検討しえます。

残念ながら、誰でも入れるタイプの保険・共済でこのような条件はありません。不正リスクもある商品なので、モラルリスクがかなり低い集団内でないと、成立しない商品だからです。普通の保険会社が同じ内容の商品を売るのは不可能でしょう。

貯金がほとんどない場合

貯金がほとんどない場合、短期間の入院費でも困る可能性があります。

その場合は親に借りればいいと思いますが、近親者による援助または貸付が期待できない場合は、貯金が100~200万円程度貯まるまで、共済・定期医療保険の加入を検討しうると考えます。

終身医療保険は保険料が変わらない代わりに初期の支払いが非常に高いので、貯蓄がたまるまでの一時的な加入には適しません。

貯金がある場合

貯金がある場合は医療保険の必要性は高くありません。入らなくても問題ないでしょう。

医療保険に加入すると安心で精神的に効用があるという場合や、入院が多くなる方にベットしたいという場合は、加入を検討し得るでしょう。

短期入院については差額ベッドを保険でカバーするくらいの金額でOKです。可能性は低いが高額の医療費がかかる可能性がある先進医療特約はつけることを検討し得ます。個人的には利益が契約者に割戻金で戻ってくる共済がいいと考えています。

老後の医療に終身医療で備えるというのは前述の通り諸々のデメリットがあり、状況変化に脆弱なので適切ではありません。

共済は1年契約であり、新しい保障も自動的に既契約に適用される可能性が高いです。先進医療保障も自動的に組み込まれました。ただ、共済の収支が悪化した場合は改悪されるリスクもあります。

最終結論

契約期間が1年で、1年ごとに1入院あたりの限度日数がリセットされ、通算支払限度なしというタイプの共済は、長期入院をリスクヘッジできるため、加入すべきだと思います。それ以外の場合は、現時点では積極的に加入する理由はないと思います。

グループ保険・共済がもしあれば、一度チェックしてみることをおすすめします。

混合診療解禁後は、保険外の治療を希望する場合は医療費が膨張する可能性が出るため、混合診療の保障の重要性が格段に上昇します。1年契約の共済は既契約にも自動的に混合診療の保障がつく可能性があります。

参考ついに混合診療(患者申し出療養)が解禁へ!医療保険の重要性が上昇

保険外の診療に備えたい場合は、混合診療対応の医療保険への加入を検討しうるでしょう。今後、新たに登場する可能性がある混合診療対応の医療保険は、検討しうると考えます。

2017年時点での医療保険の選び方については以下で解説しています。

保険会社が教えたくない医療保険の選び方まとめ
医療保険に入るか否か、どの医療保険が良いかは重要な問題ですね。きれいごとやセールストークを排除した、現役の保険会社の社員から...

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