読者の方から、ジブラルタ生命保険の積立利率更改型一時払終身保険(未来へヨーイどん!)についてご質問がありました。複雑なタイプの保険であり、資料の読みがいがありました。
ジブラルタ生命保険、未来へヨーイどん!についてまとめます。
目次
ジブラルタ生命保険株式会社とは
ジブラルタ生命保険は外資系生保であり、米国のプルデンシャル・ファイナンシャルグループの保険会社です。
プルデンシャルが2000年に経営破綻した協栄生命保険を傘下に収め、事業承継会社として設立されました。全国的な組織を有する団体(教職員団体、商工会等)と多くの提携関係があり、団体保険・共済等を引き受けています。
リーズナブルな団体保険・共済を入り口として、高マージンの保険を売り込む営業スタイルを採っているようです。公立学校の教職員、自衛官、自営業者などの契約者が多いです。
2009年には、破綻した大和生命保険をプルデンシャルが買収し、ジブラルタ生命の完全子会社となりました。現在の社名は、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険であり、銀行窓販チャネルに特化しています。
ジブラルタ生命保険とプルデンシャル生命保険は同一グループですが、直接の資本関係はありません。
2012年には、AIGエジソン生命保険とAIGスター生命保険を合併して、新生ジブラルタ生命保険が発足しました。結果的には、日本で破綻した生命保険会社7社中6社がプルデンシャル傘下となりました。
積立利率更改型一時払終身保険(未来へヨーイどん!)とは
ジブラルタ生命保険の「積立利率更改型一時払終身保険(未来へヨーイどん!)」は一時払終身保険であり、契約時に500万円などを支払い、契約時に選択した通貨(円・ドル・ユーロ・豪ドルから選択)で、時間の経過とともに積立金が増えていくタイプの保険商品です。
一時払保険料は、積立金として投入され、契約日および各積立利率計算基準日に適用された積立利率で運用されます。積立利率は所定の指標金利をもとに定められ、保険関係費用を差し引いた利率となります。
積立金は為替の変動に応じて円換算の金額が動きます。FX、外貨建てMMF、外国債券と同様に為替リスクがあります。
豪ドルの場合、おおよそ1年間に15~20%ぐらいは価格が変動するリスクがあります。2008年や2009年などの最も激しい年だと、30~40%程度変動します。
死亡保険金は、被保険者死亡日における積立金相当額または解約返戻金額のいずれか大きい金額となります。解約返戻金は、積立金額に対して市場金利に連動した市場価格調整を行うため増減します。また、契約後当初10年間は解約控除がかかります。
基本タイプと積立金定期引出タイプの二種類があります。
基本タイプ
基本タイプは配当や積立金の取り崩しがなく、積立利率に基づいて積立金が着実に増えていくタイプのものです。
積立利率は年0.05 %が最低保証されます。円建は0.05%に張り付いています。
積立金定期引出タイプ
ご契約の1年後より、毎年の積立金の増加分を定期引出金として受け取るタイプです。解約や保険金等のお支払いがない限り終身にわたって受取れます。定期引出額は、「基本保険金額×積立利率」で計算される金額です。
利付債券を保有していると定期的に利金が受け取れますが、それと同じような仕組みのイメージです。また、年1回分配金が出るが、その分基準価格は下落する債券投信と同じような仕組みです。
定期引出金は円で受け取ることもできます。円で受け取る場合は為替手数料がかかります。外貨で受け取る場合、受取金融機関によっては手数料が発生する場合があります。
定期引出に費用がかかることから、基本タイプより積立利率は下がります。概ね年-0.1%低く設定されています。年0.1%のコストを支払うことで、年1回定期引出金を得ることになります。
こちらは年0.05 %の最低保証はありません。
積立利率
積立利率は10 年ごとに更改され、次回更改時(10 年後)まで適用されます。契約時の積立利率(概ね金利に連動)が10年間固定され、10年後の更改時はその時点の積立利率が適用されます。
2014年10月01日から2014年10月15日が契約日の積立利率は以下の通りです。
通貨 | 米ドル建 | ユーロ建 | 豪ドル建 | 円建 |
---|---|---|---|---|
基本タイプ | 1.49% | 0.20% | 2.53% | 0.05% |
積立金定期引出タイプ | 1.39% | 取扱停止中 | 2.43% | - |
保険料円入金特約
ジブラルタ生命所定の為替レート(保険料円入金特約用の為替レート)を用いて外貨建の保険料を円で支払えます。
このレートは、ジブラルタ生命が指標として指定する銀行が公示する換算基準日のTT S(対顧客電信売相場)を上回ることはありません。
円支払特約
外貨建の(災害)死亡保険金、解約返戻金等をジブラルタ生命所定の為替レート(円支払特約用の為替レート)で円に換算し、受け取れます。
このレートは、ジブラルタ生命が指標として指定する銀行が公示する換算基準日のTTB(対顧客電信買相場)を下回ることはありません。
年金支払移行特約
契約日から5年経過以後、この特約を付加することで、この特約を付加した日における解約返戻金をもとに年金を受取ることができます。年金開始日はこの特約を付加した日となります。
年金種類は確定年金(年金支払期間:5 年・10 年・15 年・20 年・25 年・30 年・35 年・40 年)、保証期間付終身年金(保証期間:5 年・10 年・15 年・20 年)、保証金額付終身年金のいずれかとなります。なお、複数の年金種類を選択することも可能です。
年金額は、この特約を付加した日における解約返戻金額を基準として、この特約を付加した日における年金の種類、基礎率等(予定利率、予定死亡率等)に基づいて計算され、算出されます。
運用通貨が外貨で、この特約の年金額等を円により受け取る場合には、円支払特約によって円に換算された解約返戻金額を年金原資額として取扱います。この場合はそれ以後、外貨建での受取はできなくなります。
未来へヨーイどん!のメリット
年1回、定期引出金を得られることを重視する場合は、それがメリットになります。ただし、これは当該保険に固有のものではなく、債券でも同じです。
一度契約すると、解約までは再投資は不要で手間がかからない点もメリットです。また、契約日から5年経過以後、年金を受取ることができる商品特性も魅力に感じる方がいらっしゃるでしょう。
積立利率は10 年ごとに更改され、利率が一生涯固定されるわけではないため、一定の金利上昇リスクに対応できます。
ただし、年金額は解約返戻金額を基準として、基礎率等(予定利率、予定死亡率等)に基づいて算出されるため、特段に有利な条件ではありません。
保険という商品は多くの方に馴染みがあります。しかし、外債・外貨建てMMF・FXとなると、「難しくてよくわからないし、店頭だと営業がしつこそう」という方も多く、ハードルが上がります。
金融商品に詳しくない方でも馴染みのある保険という商品で、外貨建てのエクスポージャーを取れる点がメリットです。
未来へヨーイどん!のデメリット
デメリットには、手数料が高い点が挙げられます。具体的には、(1)積立利率の低さ、(2)定期引出にコストが発生、(3)為替手数料、(4)年金支払い期間中に1%の手数料の発生などです。
また、中途解約リスク、積立利率計算基準日がたまたま低金利のリスク、保険料控除の恩恵の少なさ、経営悪化リスク・信用リスクなどもあります。順に述べます。
コストが高い。
(1)積立利率が低い
10年ごとに積立利率が変動することから、商品特性としては期間10年を基本とする保険です。類似の代替商品としては、日本国債・米国債・ユーロ建て国債・オーストラリア国債の10年ものがあります。
例えば豪ドルですと、豪ドル10年債は利率3.46%(4月は4.18%)に対して、積み立て利率は2.4-2.5%しかありません。年利1.1-1.2%程度をジブラルタ生命が抜いていることになります。
積立利率は所定の指標金利をもとに定められ、保険関係費用がマイナスされます。保険関係費用とは、災害死亡保障費率、保険契約の締結・維持に必要な費用の率、積立金定期引出特約を付加した場合には定期引出に要する率を加えたものです。
この費用がかなりのコスト(1.1-1.2%程度)となっています。
豪ドル10年債は約20%の税金がかかり、この商品は一時所得・雑所得です。給与所得者の場合は、給与以外の収入が少ない場合は、税金面ではメリットがあります。しかし、豪ドル10年債税金約20%、この商品は0%で計算してもなお、豪ドル10年債の方が利回りは高いです。
定期引き出し金は雑所得なので、高額所得者は税金がかなり高くなってしまうので、注意が必要です。
(2) 定期引出にコストが発生
積立金定期引出タイプは、普通タイプと比べて利率が0.1%低いです。定期引出に0.1%の手数料がかかることになります。
債券の金利受取に手数料はかからないので、腑に落ちないコストです。
(3)初回50銭、受け取るときに3銭の為替手数料
保険料を円で払込む場合、保険金・定期引出金等を円で受け取る場合、為替交換手数料がかかります。
通貨 | 保険料円入金特約用の為替レート(ジブラルタ生命所定の為替レート) | 円支払特約用・積立金定期引出特約(定期引出金を円により支払う場合の特則)用の為替レート |
---|---|---|
米ドル | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM +50銭 | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM -1銭 |
ユーロ | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM +50銭 | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM -2銭 |
豪ドル | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM +50銭 | ジブラルタ生命が指標として指定する銀行のTTM -3銭 |
※当該費用は将来変更される可能性があります。
豪ドル円97.42の場合、500万円の初回払い込み時に約25,660円、受取時は10万円(約1万豪ドル)あたり約30円です。
ただし、これは外債・外貨建てMMFにも発生するのでこの商品固有のデメリットではありません。FXよりはかなり為替手数料が高いです。為替手数料の低さはFXが一番です。
保険金等を外貨で受け取る場合は、金融機関によっては諸手数料(リフティングチャージ等)が必要な場合があります。
(4)年金支払い期間中に1%の手数料
年金開始日以後、受取年金額に対して1.0%(2014年4月現在)が、年金支払日に積立金額から控除されます。当該費用は将来変更される可能性があります。
中途解約リスク
中途解約すると手数料がかかるので、かなり損となります。この保険は運用資産(債券等)の価値の変化を解約返戻金に反映させるため、市場金利に連動した市場価格調整を行い、解約返戻金は増減します。
「適用されている積立利率」が「解約日(減額日)に計算される積立利率+0.3%」より低いときは、解約返戻金が減少してしまいます。
要するに、中途解約した場合は、債券同様に金利変動のリスクにさらされます。解約時に契約時より金利が上昇している場合、損失が発生することがあります。しかも、0.3%のスプレッドが乗ってしまっています。
金利が上昇すれば上昇するほど、満期までの期間が長ければ長いほどに受取金額が減ります。豪ドル建ての積立金定期引出タイプ(積立利率2.43%)の場合の解約時の戻り率の資産は以下の通りです。
満期までの年数 | 返戻率(1%金利上昇) | 返戻率(2%金利上昇) |
---|---|---|
1 | 98.7% | 97.8% |
2 | 97.5% | 95.7% |
3 | 96.3% | 93.6% |
4 | 95.1% | 91.5% |
5 | 93.9% | 89.5% |
6 | 92.7% | 87.5% |
7 | 91.5% | 85.6% |
8 | 90.4% | 83.7% |
9 | 89.3% | 81.9% |
また、契約日から10 年未満に解約する場合は、下表の解約控除がかかり、受取金額が減ります。契約から10年未満で解約すると、解約ペナルティが発生します。
契約日からの経過年数 | 外貨建 | 円建 |
---|---|---|
1年未満 | 10.00% | 7.00% |
1年以上2年未満 | 9.00% | 6.30% |
2年以上3年未満 | 8.00% | 5.60% |
3年以上4年未満 | 7.00% | 4.90% |
4年以上5年未満 | 6.00% | 4.20% |
5年以上6年未満 | 5.00% | 3.50% |
6年以上7年未満 | 4.00% | 2.80% |
7年以上8年未満 | 3.00% | 2.10% |
8年以上9年未満 | 2.00% | 1.40% |
9年以上10年未満 | 1.00% | 0.70% |
10年以上 | - | - |
これらの市場価格調整や解約控除によって、中途解約時の解約返戻金額は一時払保険料相当額を下回ることがあり、損失が生じるおそれがあります。
積立利率計算基準日がたまたま低金利のリスク
積み立て利率が決まるのが10年に1回で、積立利率計算基準日ごとの積立利率に更改されます。
10年に1回の基準日の利率が10年間適用されるので、積立利率計算基準日がたまたま低金利のリスクがあります。債券の場合はとりあえず現金で保有して様子を見ることが可能です。
金利は大きく変動しており、豪ドル10年債は今年4月は4.18%が足元では3.46%。0.7%も低いです。ここ1ヶ月でも、未来へヨーイどんの積立利率は9月上旬は米ドル建て1.26%→10月上旬は1.39%、豪ドル建て2.40%→10月上旬は2.53と動いています。10年間だと結構な違いになります。
保険料控除の恩恵が少ない。
一時払いは、保険料控除は支払った年のみです。もし枠があまっている場合は、一時払いだともったいないです。
月払いだと保険料控除の恩恵を毎年受けることができます。ただ、単純な支払った金額に対する受取額は、当然に最初に大金を支払っているだけ一時払の方が多いです。
経営悪化リスク・信用リスク
ジブラルタ生命が破綻した場合、補償限度は、高予定利率契約を除き、破綻時の責任準備金等の90%となります。保険金・年金等の90%が補償されるわけではありません。
この商品の場合、破綻時の利率によっては高予定利率契約に該当する可能性があり、もっと削減される可能性があります。
また、破綻後の保険契約の移転等の際には、責任準備金等の削減に加え、契約条件の算定基礎となる基礎率(予定利率、予定死亡率、予定事業費率等)の変更が行われる可能性があり、これに伴い、保険金額・年金額等が減少することがあります。
早期解約控除制度が設けられて、破綻後に早期に解約すると大損になる可能性もあります。
ジブラルタ生命は世界的大手のプルデンシャルグループの一角であり、現時点での信用力は高いですが、数年前には世界最大手の保険会社AIGが破綻寸前までいったことがあります。
10年・20年・30年先の企業の信用力は誰にもわからないというのが現実です。1970年代にJALが破綻すると予測できた人は皆無でしょう。
ジブラルタ生命はソルベンシーマージン比率945.1%(2014年6月末)、S&Pの保険財務力格付はAA-と現在は健全です。
しかし、年金を受給することになる遠い将来までジブラルタ生命も100%大丈夫とはいえず、信用リスクがあります。
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