みずほ銀行が外貨建て個人向け社債を発行します。愛称は「みずほ銀行債」です。
期間は豪ドル建て債券が約4年(2019/1/25償還)であり、仮条件は2.35%~3.35%(中央値2.85%)です。利率は2.76%に決まりました。
米ドル建て社債の期間が約5年(2020/1/25償還)であり、仮条件は1.50%~2.50%(中央値2.00%)です。利率は1.60%に決まりました。
募集期間は2015年1月19日月)~1月28日(水)です。単位は1千豪ドルないし米ドル以上、1千豪ドルないし米ドルです。
みずほ銀行の長期発行体格付はAA-(JCR)です。JCRは昨年7月18日時点では、みずほ銀行について以下の通りに評価し、格付けの見通しは「ポジティブ」としています。
みずほフィナンシャルグループの中核商業銀行。格付は、堅固な事業基盤、比較的良好な資産の質と資本水準に支えられている。
課題であった資本水準の改善が進捗していること、与信費用の抑制などにより資本基盤の充実が今後も継続する可能性が高いことなどを踏まえ、格付の見通しを「ポジティブ」としている。
合併に伴う効率化、グループ協働の成果などにより資本水準の改善を持続できるか見極め、格付に反映させていく。
JCRのAA格社債(5年)の平均累積デフォルト率(2000~2013年)は5年0%でした。完全無双です。
格付会社の格付けは当てにならんという声もありますけれども、新種の商品の格付けは別として、一般事業会社の格付けについては、見事なまでに綺麗に格付けに沿って下に行けば行くほどデフォルト率が高まっています。
みずほ銀行の豪ドル建て・米ドル建て社債(みずほ銀行債)については、貴重なイールドが乗った社債になります。
オーストラリア国債4年もの2.09%と比較すると0.26%~1.26%のスプレッドが乗っています。
また、米国債5年の1.28%と比較すると、0.22%~1.22%のスプレッドが乗っています。
金利は極限まで低下しており、イールドが盛大に潰されて焦土と化しました。当座預金に預けられる銀行はまだましですが、保険会社や年金基金は苦悶しています。
更なる追加緩和があると冗談抜きに10年債あたりまで0%に近づくのではという戦慄的恐怖が漂っています。このような情勢では高金利のイールドには希少価値があります。
もちろん為替リスクはあります。1年で15~30%程度の変動は十分に有り得る点には留意が必要です。
為替リスクを許容できるのであれば、資産の一部であれば、検討に値する社債だと考えます。みずほ証券、みずほ銀行などで申し込めます。
なお、JCRでは銀行セクターについて以下のように評価しています。
資産の健全性は維持されており、利益計上により資本水準の改善も続いている。海外業務を手掛けるグループでは、拡大してきた海外部門が収益を下支えしている。
ここ数年の主要行の業績は、総じて波乱のない内容で推移している。14/3期は多くのグループが連結最終利益で過去最高益を更新、または最高益に迫る水準の利益を計上した。
実質業務純益をみると市場部門での減収を主因に前期比減った銀行が多かったものの、債券関係損益を除くコア業務純益では増加ないし横ばいとすることができた。海外業務を手掛ける主要行では、アジア、北米を中心に海外向け貸出を伸ばしており、海外部門の金利収益が拡大している。
また、非金利収益が国内外とも好調を維持し業績に寄与している。地域金融機関などに比べ多様で厚みのある事業基盤と経営資源を有する主要行の強みが発揮された結果とみられる。国内収益への低下圧力がかかってはいるものの、主要行グループはいずれも、現状の格付に見合う一定の収益を安定的に確保するに足る堅固な事業基盤を有しているとJCRはみている。
もっとも、基礎的な収益力は全般に弱含んでいる。国内預貸収支は、国内総資金利ざやがマイナスに転じた主要行もみられるなど厳しい。貸出スプレッドの縮小傾向が続く一方で預金金利の低下余地は極めて限定的で、利ざやの縮小が続くとみられる。
アベノミクス効果を背景に一部で資金需要が回復し国内貸出残高にも反転の兆しがみられるものの、より広汎で持続性のある企業の運転・設備資金需要の本格的な高まりはまだ確認できていない。有価証券運用収入も、極めて緩和的な金融政策の下での大幅な資金余剰と超低金利の継続によって、弱含みが続くとみられる。
足元で好調な海外部門についても、信用リスク管理や外貨ファンディングの安定性の確保、規制対応などが海外事業拡大の制約要因となる可能性もあり、現在の拡大ペースが中期的に持続できるかは慎重にみる必要がある。
また、ここ数年みられた非金利収益の伸びの背景には各行の取り組み強化の成果があるとはいえ14/3期については株式市況の回復に助けられた部分が少なくないとみられる。格付には足元と同程度のペースで収益力の弱含み傾向が続くとの見方を織り込んでいる。
貸出資産の健全性は維持されている。不良債権残高は全グループで減少しており、14年3月末の金融再生法開示債権比率は、貸出の増加もあって主要行全体で1%台前半まで低下している。不良債権の予備軍ともいうべき「その他要注意先債権」や「要管理債権以外の要管理先債権」も大きく減少している。
海外向け貸出の割合が高まっており、買収ファイナンス、プロジェクト・ファイナンスなど特定のプロダクトや大口先の割合が比較的大きいことから注視が必要であるが、現在のところ、海外向けの延滞債権等の割合は国内向け貸出より低い。主要な対象が政府、金融機関、日系企業、現地の優良非日系企業向けとなっていることが反映されている。
足元ではロシアや中東など一部地域でのカントリーリスクの高まりがみられるものの、海外向け全体のボリュームは各グループとも貸出残高の2~3割程度にとどまっており、仮にリスクが顕現化したとしても、今のところ影響は管理可能な範囲に収まるとJCRはみている。
国内での大口与信集中も大きなリスクであり、与信費用が一時的に膨らむリスクは無視できないものの、高格付の大企業向けで大宗が占められており、管理可能とみられる。企業サイドではこれまでの有利子負債の圧縮・抑制努力で財務内容が改善しており、ストレス耐性は過去の大幅な景況悪化時よりも高まっているとみられる。
与信費用は引き続き低位で推移しており、14/3期は全グループにおいてネットで戻入となった。企業業績が回復し不良債権の新規発生が減少していることに加え、これまでに多くの主要行でDCF法の採用などにより厚めの引当水準を維持する方策がとられたことが主因とみられる。もっとも、戻入益計上は継続的にできるものではなく、クレジット・サイクルの上昇局面にみられる現象という側面がある。
日銀による極端な金融緩和策が目指すデフレ脱却が実現すれば、長期金利の上昇を伴う可能性が高い。主要行はこれまで国債保有を有価証券運用の中心に据えてきたため、金利上昇の影響を受けやすい構造となっていたが、いずれの主要行も足元で国債残高をかなり抑制しているうえ、デュレーションを短縮し1~3年程度にとどめるなどして金利リスク量の増加を抑制している。
国債圧縮分の多くは超過準備への付利が0.1%しかない日銀当座預金に置かれている模様である。しかし、日銀による資金の大量供給が続き内外債券での収益機会が狭まるなかで、エクイティ性商品などの比較的リスクが高い商品に資金を振り向ける動きが一部にみられる。
今後、余資運用における保有資産の構成とリスク特性が変化していく可能性がある。足元では政策投資株式の保有額が時価でTier1資本の3割近くあるグループがあり、株式投信も含めると株価下落に際し相応の損失が生じる構造にある。本格的に導入されつつあるリスクアペタイトフレームワークなどを通じ、資本とリスクのバランスに留意した運用がなされるかどうか、注目していく。
銀行以外のグループ会社による連結利益への寄与が徐々に拡大している。グループ傘下の証券会社においては、市況の改善が業績に寄与した面があるとはいえ、利益を着実に計上している点は評価できる。
また、消費者金融会社や信販・クレジットカード会社においては、営業貸出残高の縮小に歯止めがかかってきており、営業収益の減少幅は縮小してきている。ショッピングクレジットやリボ払いの取り扱いも堅調である。
一方、過払利息返還請求は減少スピードに鈍化がみられるため、利息返還請求の動向や引当残高の推移に留意する必要があり、消費者金融ビジネスがグループの収益を本格的に底上げする存在となるには今しばらく時間がかかるとみられる。
各種リスクは自己資本との対比で管理可能なレベルにあるとJCRはみている。保有株式の残高は資本対比でみて依然多いが、削減努力が続いている。債券の金利リスクは保有国債の圧縮とデュレーションの短期化が奏功し、ベーシス・ポイント・バリューでみて大きく減少している。流動性についても特に問題はない。
ただ、海外貸出については、譲渡性預金、CP、中央銀行からの預金といった取引先預金に比べて粘着性が比較的弱いとみられる外貨調達方法への依存度が高い場合、調達の安定性向上が課題になってくるとみられる。
新自己資本比率規制(バーゼルⅢ)では、国際統一基準行につき19年3月の完全実施時にかけて所要資本水準の引き上げや控除の実施が段階的に行われるが、国際統一基準を採用するいずれの主要行グループとも完全実施時には普通株式等Tier1比率の所要資本水準を確保できる見通しである。
JCRにおいてTier1資本からその他包括利益累計額などを控除し、優先株や優先出資証券に一部資本性を認めて算出した「調整後Tier1比率」はこの1年で大きく変化していない。
海外向け貸出の増加、買収、信用リスクアセットの算出方法の変更などにより、リスクアセットが大きく変化したグループがみられたが、利益蓄積などにより資本は着実に増加しており、資本水準は横ばいまたは上昇傾向にある。多くの主要行グループはレバレッジ比率などの各規制には対応可能とみられる。
もっとも、その他Tier1資本やTier2資本に含まれる旧基準適格の調達手段の割合が比較的大きい主要行グループもあり、グローバルな競争力の維持のためには、着実な利益蓄積に加え、旧基準の資本調達への手当てなどが必要になるとみられる。各グループの資本政策や資本の積み上げの源泉となる収益力の動向などを注視していく。