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我々は経常赤字に備えてどう対策すべきか?

更新日: マーケット・経済の分析

夕日

2013年度の経常収支は約7899億円の黒字となり、比較可能な過去30年間で最少となりました。黒字幅は前年度比81.3%減と急落しています。1月の経常赤字は比較可能な1985年以降でで過去最大となりました。

将来的な経常赤字転落が現実的な問題となってきました。私達は日本の経常赤字化にどう臨むべきなのでしょうか。

経常収支とは

経常収支の定義には様々な表現がありますが、「経常収支=民間の余剰(貯蓄-投資)+政府の余剰(税収-政府支出)」とも言えます。経常収支がマイナスになる要因には、民間の貯蓄の減少、投資や消費の拡大、政府部門での財政赤字拡大があります。

経常収支悪化要因

日本の経常収支が悪化している要因は、円安や燃料輸入増による名目消費の拡大、財政赤字の拡大、貯蓄の減少が挙げられます。輸出競争力の低下や、企業が生産拠点の海外移転を進めたことなどから輸入ほどには輸出は伸びず、貿易収支は赤字が定着しています。

2013年の貿易数量は、ドル円が70~80円台だった2012年よりも減少しました。円安が進んでいる現在も、製造業は現地生産の観点やリスク管理の観点から基本的に海外生産を増やす方向となっています。

以上の状況に鑑みると、日本で起こっている経常黒字の縮小は、投資や消費の健全な拡大が要因ではありません。「良い経常収支悪化」ではなく、「悪い経常収支悪化」だと思います。

経常収支が赤字になるということ

経常収支が赤字になるということは国内資金の不足と同義であり、国内赤字部門(日本政府)の資金不足を民間(家計+企業)だけでは賄えなくなることです。一言でいうと、日本国債を国内だけでは消化できない状況です。

経常収支が赤字になることで、対外資産を売却するか、日本人・日本企業よりも圧倒的に高いリスクプレミアムを要求する海外投資家に日本の資産を買ってもらう必要が生じます。


経常赤字で日本はヤバイ?

日本は最大の純債権国であり、破綻は遠い

もっとも、日本は長らく経常収支黒字が続いており、中国・ドイツ・スイスを抑えて世界最大の純債権国であり、300兆円近い膨大な対外純資産を保有しています。経常赤字によって対外資産が減少していきますけれども、直ちに外国人に日本国債消化を大きく依存することにはならないでしょう。

国内貯蓄の大半は高齢者が保有し、安全志向から現預金や保険などの保有比率が高く、海外シフトも起こりにくい側面があります。鉄板の資金循環構造になっています。

経常赤字はこれに揺らぎが生じますが、すぐに金利が急上昇してハイパー円安で日本破綻といったフジマキ・ワールドが現実化するのは考え難いと思います。

国債下落してくれと願う機関がいる

また、現実問題としては、日銀の異次元緩和によって日本国債の需給は猛烈にタイトになっており、金利が低すぎて国内の金融機関は逆に困っている側面もあります。

CPIが1~1.6%という状況で10年債利回りが0.6%というのは「悪い冗談」であり、保険や年金基金としては、「もう少し金利が上がってくれ(国債価格が下落してくれ)」という希望もあります。10年債利回りが1.5%くらいで安定してくれるとありがたいという会社は多い気がします。

今後金利が上昇(国債が下落)していった場合、まだまだ喜んで日本国債を買う投資主体は多いです。

「金利が上昇したら金融機関が破綻」という声も強いですが、金利が上昇したとても時価評価しなくてよい保有国債も多く、満期を迎えて再投資する利回りは上昇します。急激に上昇してボラが高まるのは勘弁ですが、マイルドに上昇するのは歓迎という会社も多いです。

将来的には要注意

ただし、未来永劫問題ないわけではありません。経常収支の赤字が続いていくと、対外資産を売却していくことや、外国人に日本国債や国内資産を買ってもらうことが必要になります。

当面は対外資産の売却で赤字を賄うことはできます。しかし、投資家の立場からは、これまでより高いリスク・プレミアムが必要になります。ましてや、外国人の日本資産の購入には日本人よりも高いリスク・プレミアムが要求されます。

基軸通貨の特権はない

米国のように直接投資や米国債で外国から安定的な資金流入が可能なら問題ありませんが、基軸通貨国の特権が大きいです。

黒田総裁が昔の著書で述べているように、ドルが基軸通貨であることがアメリカには絶大なプラスとなっており、為替差損を気にすることなく、貿易や投資を自由に行なえて無制限に借金できます。財政赤字のみならず、企業赤字や家計赤字もいくらでもドルを発行することでファイナンスできる状況です。

国際金融センターも資源もない

イギリス、フランス、オーストラリア、カナダなどの先進国も経常赤字ですが、イギリスはシティやタックスヘイブンの魅力、フランスは戦勝国で欧州のドンでユーロ圏の一員である点、オーストラリアとカナダは資源国である点などが、資本収支の黒字に大きく寄与しているのでしょう。白人国家プレミアムや戦勝国プレミアムがあるのかもしれません。

日本は国際金融センターも資源もタックスヘイブンもなく、また日本国債に対する海外の評価は厳しく、直接投資で安定的な資金流入が可能かというと不安がよぎります。

日本の経常赤字への対策

素直に考えると経常赤字は円安要因です。また、経常赤字で国内貯蓄余剰が少なくなっていくと、遠い将来においては長期金利の上昇を抑えるために、1940年代に米国や英国の中銀が採用した国債価格支持政策を日銀も採らざるを得なくなる可能性があるでしょう。

結論としては経常黒字の減少、「金利<インフレ率」の構造を維持するのが国策である点などから、預貯金100%だと資産が実質的に目減りしてしまうリスクが高まっています。

一定以上の資産を保有している場合は、円預金100%はリスキーでしょう。無理にリスクを取る必要はありませんが、構造変化が進行している点は押さえておきたいところです。今後も経常収支のウォッチは続けたいと思います。

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