購買力平価説と為替の関係について

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ここに来て原油安でインフレ率が低下傾向となっています。しかし、ドル円の購買力平価が大局的には円安方向に向きつつあります。

投資家必見!ドル円の購買力平価に注目の動き

購買力平価について解説します。購買力平価説には、絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説があります。

絶対的購買力平価説とは

絶対的購買力平価説は、為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説です。

具体的には、例えばアメリカで1ドルで買えるハンバーガーが日本では120円で買える場合、1ドルと120円では同じものが買える(1ドルと120円の購買力は等しい)ので、為替レートは1ドル120円が妥当という説です。

物やサービスの価格は、通貨の購買力を表し、財やサービスの取引が自由に行える市場では、同じ商品の価格は1つに決まります。「一物一価の法則」と呼ばれています。

一物一価が成り立つとき、国内でも海外でも、同じ商品の価格は同じ価格で取引されるので、2国間の為替相場は2国間の同じ商品を同じ価格にするように動き、均衡するという理論です。

しかし、この説が成立するのはすべての財やサービスが自由に貿易されなければなりませんから、厳密には成り立たないことになります。

相対的購買力平価説とは

相対的購買力平価説は、為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという説です。

具体的には、替相場は2国における物価水準の変化率に連動し、ある国の物価上昇率が他の国より相対的に高い場合、その国の通貨価値は減価するため、為替レートは下落するという考え方です。

正常な自由貿易が行われていたときの為替相場を基準にして、その後の物価上昇率の変化から求められます。現在はこの求め方が主流となっており、以下の計算式で計算されます。

A国の相対的購買力平価=基準時点の為替相場×A国の物価指数÷A国国外の物価指数

基準時点については、ドル円の場合は、日米ともに経常収支が均衡し、政治的圧力も無く自然に為替取引が行われていた1973年が選ばれることが多いです。

これが厳密に成立するには全ての財・サービスが同じ割合で変動しなければならず、常に厳密に該当するわけではありません。

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購買力平価は妥当か

絶対値ではなく傾向性

企業物価、消費者物価、輸出物価など物価には複数の種類があり、どの物価を利用するかで購買力平価は変わってきます。

また、最初の基準をどの年月日にするかで購買力平価の値は変わってきます。

したがって、購買力平価は絶対値というよりは大局的な傾向性を把握するのに利用したり、乖離が長期的に継続した場合は、為替相場に反転のリスクがあると意識して利食いやポジション調整、資産配分の検討の際に活かすという使い方がいいと考えます。

長期では妥当

絶対的購買力平価説は計算が現実的には難しいことから、相対的購買力平価説が採用されています。

為替レートであれば、超長期的には購買力平価が成立しなければ、同一財に対して二国の物価に大きな差ができてしまいます。

こうした状況が10年スパンの超長期的に続くのはおかしく、基本的には、両国のインフレ率の差を埋めるように為替レートが動くことになります。

わかりやすい例を挙げると、現在はアメリカでルイヴィトンのバッグが1,000ドル、日本では1ドル120円で12万円だとしましょう。

米国でインフレ率2%、日本で0%が20年間続いたとすると、20年後に米国ではルイヴィトンのバッグが1,486ドルになり、日本では12万円のままとなります。

為替レートが1ドル120円のままだったら、日本では1,000ドルでルイヴィトンのバッグが買えることになります。

そうだとすると、日本でバッグを買ってインターネットでアメリカ人に売れば、手数料・送料を除くと486ドルも儲かることになります。

こういう状況が永遠に続くことはなく、やがて裁定が働いて日本の物価が上がるか、円高方向に進んで物価差が為替レートで調整されるというのが購買力平価の帰結になります。

通貨の究極的な価値は購買力であり、購買力平価は理論的にも現実的にも超長期では該当するという見解が有力です。

実際に為替レートが変動相場制になってからのドル円の40年以上の歴史を見ると、円高・円安に一時的に振れる時期はありますが、長期的には購買力平価に添う形で為替レートが変動してきました。

ドル円の購買力平価の推移(1973年~2014年10月)

(公益財団法人 国際通貨研究所より)

短中期は大きな乖離も

注意点としては、短中期(~5年)の期間は、購買力平価から大きく乖離して為替レートが動くことはよくある点です。

為替相場は購買力の他にも様々な要因によって影響され、短期的には需給バランスで揺り動きます。

したがって、欧州や豪州に旅行に行ったら物価が高すぎたので、購買力平価に基づいてユーロ円や豪ドル円をショートというのはリスキーです。短期的には乖離が続く場合も多いため、長期にわたって逆張りのポジションを維持しなければならない状況に追い込まれることもよくあります。

購買力平価に基づいたFXや外債・外貨建てMMFの売買としては、金利が高いほうの通貨が購買力平価で明らかに割安になっている時に、短期的な含み損を覚悟して、長期の反転を期待してロングするというのがいいでしょう。

日本の場合は、円高局面での外貨ロングです。この場合は、金利が高い方の通貨をロングするため、スワップポイントや高金利を享受できることから、短期的な含み損に耐えられます。

しかし、スワップポイントがマイナスのポジションを長期にわたって維持するのは大いなる胆力が必要になることから、日本では、購買力平価に基づいた外貨ショートは、余程タイミングが上手くないと、ボディーブローのように積み重なってくる評価損に耐え切れなくなって撤収となりがちです。

結論としては、短中期的には為替レートは購買力平価から乖離して推移することも多いものの、購買力平価から大きく乖離した為替レートが超長期的に続くことは難しく、やがて調整されるという整理をする見解が多いです。

購買力平価は為替レートと物価の変動で調整

為替レートと購買力平価から大きく乖離した場合、為替レートの変動か、インフレ率格差の逆転のどちらかで調整されます。

今後、円が購買力平価から乖離して大きく円安に進んだ場合、いずれ円高で調整されるか、日本のインフレ率上昇で調整されるかのどちらかです。

足元ではドル円の購買力平価が円安方向に向きつつあります。日米でインフレ率格差がなくなった場合は、超長期的にはドル円は購買力平価を挟んだボックス相場に移行するでしょう。

日本の方が米国よりもインフレ率が低い状況が続いた場合は、やがて円高が訪れる可能性が高いです。

そのきっかけは異次元緩和のテーパリング、もしくは米国で経済が失速してFRBが再び金融緩和に乗り出すことが挙げられます。

この2つのどちらかが発生した場合は、2012年から続く円安トレンドが終焉し、円高トレンドに移行すると考えます。国内要因では、インフレ率が上がりすぎること、円安・金融緩和批判が多数派になると、ドル円に大きな動揺が生じかねません。

もっとも、衆院選での自民党勝利で円安・金融緩和路線が信認されたこと、原油価格の下落でしばらくは追加緩和もあり得る状況が続くこと、米国経済が近いうちに盛大に逆噴射することが考えがたいことから、2015年は緩やかな円安が続くと思います。

ちなみに外国債券の税制は2016年から大きく変わります。外債投資の際には留意しましょう。詳細は以下で徹底解説しています。

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