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2016年、円高はどこまで進むか?ドル円の方向性を予想

更新日: マーケット・経済の分析

ドル紙幣

ドル円が急速に円高になり、一時は108円を割れました。円高トレンド転換を唱えるアナリスト・ストラテジスト・有識者が増えてきました。

中長期的にドル円がどのように推移するのかの相場観について述べます。


ドル円の購買力平価

過去40年の推移

公益財団法人国際通貨研究所から引用したドル円の購買力平価(1973年基準)では、現在の為替レートは消費者物価よりもやや円高水準、企業物価よりもやや円安水準、輸出物価よりはかなり高い水準となっています。

購買力平価の起点には、固定相場崩壊後2年が経ち、当時の経済実態を反映した落ち着きが見られたこと、日本の経常収支がほぼバランスしていたことから1973年がよく用いられています。

ドル円の購買力平価(2016年2月)

相対的に低インフレの国の通貨(円・スイスフランなど)には、長期的期間では購買力平価による構造的な通貨高圧力がかかります。

インフレとはモノやサービスと交換する時の通貨の価値(購買力)の下落です。

各国通貨の購買力の観点で、理論的な名目為替レートの均衡値(=購買力平価)を計算すると、相対的低インフレ国の通貨には、他国との物価上昇率の違いの分、中長期的には自国通貨高圧力がかかると言われています。

ただし、短期的には為替レートの変動は需給が全てです。実需よりも仮需・トレーディングが為替取引に占める割合は圧倒的です。

また、関税などの影響、サービスなどの非貿易財(消費者物価に占めるウエイトが高い傾向)は、貿易財のように輸出入の裁定が機能しにくい側面があります。

ただし、過去の歴史においては中長期的には購買力平価に沿って為替レートが動いてきたという経験則がありますし、理論的にも収まりがいいです。

1973年基準の購買力平価(企業物価)の99.18円まではドル円の円高余地があると言えるでしょう。

直近4年間

重要なのは変化です。ここ最近の傾向を見ると、常に右肩下がりだった購買力平価が、2012年以降は横ばいで推移しています。

ドル円の購買力平価(2012年~2015年)

このまま日米ともにインフレ率の格差がない状態で推移したとすると、今後はドル円の為替レートはボックス相場で長期的には推移していくことになります。

ただし、2015年以降再び円高方向に若干動き始めているような気配が不穏です。

手段を選ばずに金融緩和と財政緩和を続けたら、インフレ率2%は達成可能です。国債の増発によるヘリコプター・マネー(財政支出の拡大や減税)を続けたら必ずどこかで2%になると思われます。

問題はオーバーシュートになった時です。その時に金融緩和の打ち切り、金融引締めができるのかが問題になります。

金利を上げないでインフレを落ち着かせるためには強烈な財政引き締めが必要になりますが、それができるかどうか。その懸念からか、さすがに今はそのルビコン川を渡るところまでは踏み込んでいないという状況です。


実質実効為替レート

ドル円の実質実効為替レート(下図の青線)を見ると、過去30年間でかなりの円安水準です。

実質実効為替レート(1980年~2016年)

1980年代前半代半ばまではドルが強く、その後に1985年のプラザ合意でドル高が修正され、オーバーシュートが発生して過剰な円高が1995年まで続きました。

それからは円高修正が続き、2007年にかけて円安方向にオーバーシュートしました。円安修正が発生して、しばしもみあった後、アベノミクスと異次元緩和で円安方向に進みました。

今後は、相対的インフレ率の格差の縮小(日本のインフレ率上昇&外国のインフレ率低下)で調整するか、円高で調整するかのどちらかです。

ドルインデックスはレーガノミックス、90年代のアメリカ黄金期に次ぐ第3の上昇トレンドが続いていましたが、ここに来て息切れ気味の情勢です。

ドルインデックス

今後の動向

現在のドル円は急速な円高が進んだものの、1973年基準の購買力平価(企業物価)からはやや円安であり、実質実効為替レートの観点では円高方向への修正がありそうです。

ここ3年ほど円安が進んだのは、日米の金融政策のサイクルの違いが大きいでしょう。ドル円が長期均衡値からドル高・円安方向へ乖離するのは素直に考えると自然でした。

為替レートがオーバーシュートする場面では購買力平価から±20%程度の乖離は普通に生じています。現在はちょうどそこから10%強ほど反転してきました。

時節的には直近のドル円の底(75.32)だった2011年10月から、直近の天井(125.86)の2015年6月まで、3年8ヶ月が経過しました。

これは1995年~1998年の3年4ヶ月を超えており、そろそろ感があるのは否定できません。

安値 高値 騰落率 期間
1988年11月 121.10 1990年4月 160.20 32.3% 1年5ヶ月
1995年4月 79.75 1998年8月 147.66 85.2% 3年4ヶ月
1999年11月 101.22 2002年1月 135.14 33.5% 2年2ヶ月
2005年1月 101.68 2007年6月 124.13 22.1% 2年5ヶ月
2011年10月 75.32 2015年6月 125.86 67.1% 3年8ヶ月

1990年以降の円高局面は、最大でおよそ-50%もの円高になり、期間は5年でした。逆に最短は1年3ヶ月であり、騰落率の最低は-24.8%でした。

高値 安値 騰落率 期間
1990年4月 160.20 1995年4月 79.75 -50.2% 5年0ヶ月
1998年8月 147.66 1999年11月 101.22 -31.5% 1年3ヶ月
2002年1月 135.14 2005年1月 101.68 -24.8% 3年0ヶ月
2007年6月 124.13 2011年10月 75.32 -39.3% 4年4ヶ月
2015年6月 125.86 ? ? ? ?

留意点としては、これらは日米のインフレ率格差が激しく、ほぼ恒常的に購買力平価が円高方向に動いてきた中での推移だったことです。

2015年半ばからは再び購買力平価が円高方向にいく気配が出ていますが、それでも過去と比べるとマイルドです。

かつ日米の金融政策のサイクルは、出口にさしかかっている米国と、出口は程遠く、「禁断の果実」であるヘリコプターマネーの投入もかつてない程に現実的である日本とでは、真逆の方向性となっています。

以上を総合考慮すると、仮に今回の調整が押し目ではなく、2015年6月の125.86をピークに小泉相場の124.13とダブルトップとなったとしても、円高の期間・値幅は激しくならないと予想します。

調整は1998年~1999年型のように比較的短期間(1年~2年)となり、また差し込んだとしても深くなく、騰落率-25%程度・95円前後を下値目途として想定しています。

米国大統領選が終わり、落ち着きを取り戻した2016年末~2017年前半頃に円高が止まり、2020年東京オリンピックに向けた日本最後(?)のバブルにGO!というシナリオはいかにも有り得そうです。

もし今後、更なる円高に進み、ドル円が95円前後になったら、再び日本がデフレに沈み購買力平価が円高方向に進軍を再開することがなければ、長期的スパンでは押し目買いの好機だと思います。

海外旅行、ロレックス・ルイヴィトンなどのメガブランド、海外の高級車などに定期的に支出している場合は、ある程度円高になったタイミングで一定程度ドル等の外貨を確保しておくのも一考です。

将来の負債と資産をマッチングさせるという点で、ALMの重要性は家計にも当てはまります。95円割れがあったら将来の外貨の支出に対して外貨資産を保有することで、スカイマークのような蹉跌を回避するという観点もあります。

個人的には頭と尻尾はくれてやれは為替にも該当すると考えています。トレンドが出ている時は自分の意に反していても逆らわず、トレンドが反転したようになったらポジるのを基本に望みます。

頭と尻尾がない焼き魚の切り身
株式投資や投資信託・ETFの投資において難しいのは利益確定のタイミングです。特に現在のように上昇相場が続いている場合は大き...

私自身の状況としては、3月の名古屋セミナーでは質疑で少しお話したのですが、2012年末にドル円をロングして、2015年から徐々に利益確定しました。3月末にも利確して現在は残っているのは1万通貨のみ(これは永久ロング)です。

中長期投資としては、ドル円95円割れがあれば買いゾーンだと思います。リスクシナリオとしては米国が盛大にズッコケて、利上げが停止して再度金融緩和に行った場合です。

この場合は再び短期的に円高にオーバーシュートすることが予想され、円高の調整も深くなり90円割れといったことも有り得そうです。ただし、現時点ではそこまでは行かないと思っています。

現在の為替水準(108円)はどっちにいってもおかしくなく、かつ積極的にドル円をロングしたい水準ではないため、トレンドが出るような状況だと感じるまでしばらく様子見とします。

ちなみに外国債券の税制は2016年から大きく変わっています。外債投資の際には留意しましょう。詳細は以下で徹底解説しています。

海外の水辺と夕焼け
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